易経:福来たる:地雷復
御来訪有難うございます。 2022年6月3日
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21世紀になって昔ながらの大規模侵攻(戦争)が起こりました。易経の中の「地雷復」の復は、陽爻が
復って来るので福来たるの意味です。各爻辞では、道からはずれた者が「陽の正しい道に復る」という内容が展開されます。爻が進むに連れて次第に道からの乖離が大きくなり、上爻(第六爻)では正しい道に戻れなくなり、災眚を生じます。筆者は電子本の中にその卦についての解説を載せていますので、ここに加筆引用掲載致します。
第32章 地雷復:福来たる
地雷復䷗は二十四番目の卦です。
復は返る・戻るの意です。何が戻るかと云えば、山地剥䷖によって剥尽された陽爻がやっと
復って来たわけです。
消長十二卦の見方によれば、山地剥䷖ → 坤為地䷁となって陽の気が衰え果てたのが、また回復して地雷復䷗となるとみます。
陰爻が一つ返る
天風姤䷫も、返る意味がありますが、陽が返る地雷復は、福来たると喜び、陰が返る天風姤は、期待されざる女が突然現れたという見方を、易はしています。陰よりは陽を尊ぶ易の考えが表れていますね。
- 卦辞
復。亨。出入无疾。朋来无咎。反復其道。七日来復。利有攸往。
復は亨る。出入疾无く、朋来りて咎无し。其の道に反復す。七日にして来復す。往く攸有るに利し。
【大意】
復は、陽の正しい道が返り戻って次第に長じ始めるから亨る。陽が出入りする消長の循環は時に応じ順い動いて健やかに行われ、邪魔するものは何もない。復卦の主爻の初九と同じ朋と呼べる陽爻が来たり長じるので咎はない。陽気は消長の道を反復往来して、純陽の乾から姤・遯・否・観・剥・坤・復まで七転して来り復す。復は陽気が進み長じる時であるから進んで事を為すによろしいのである。
◯語句
復亨:復は、陽の正しい道が返り戻って次第に長じ始めるから亨る。まだ一陽剛で勢いが弱いので元亨とは言わない。
出入:出は、姤から坤まで陽が出る。入は、複から乾に至るまで陽入る。
出入疾无し:出入を害するものがない。消長の循環が時に応じ順い(外卦坤☷は順)、動いて健やかに行われる(内卦震☳は動く)。疾は疾害。
朋:復卦の主爻の初九と同じ陽爻。朋は同類。
朋来无咎:陽が来たり長じるので咎なし。
七日:消長の道にて、純陽の乾から姤・遯・否・観・剥・坤・復まで七転するをいう。
其道:陽気の消長の道。
- 初爻
初九。不遠復。无祗悔。元吉。
初九は遠からずして復る。悔いに祗る无し。元吉なり。
【大意】
初九は陽剛居正。卦の始めに在り成卦の主爻で、道に復るに速やかなる者とする。善の道から離れること遠からぬうちに速やかに復帰する。過ちを侵すまもなく省みて善の道に復するので、悔いる事もない。故に大いに吉である。
◯語句
不遠復:善の道から離れること遠からぬうちに復帰する。
祗:至。
- 上爻
上六。迷復。凶。有災眚。用行師。終有大敗。以其国君凶。至于十年。不克征。
上六は復るに迷う。凶なり。災眚あり。用て師を行れば終に大敗有り。其の国君に以ぶ、凶なり。十年に至るも征する克わず。
【大意】
上六は陰柔居極。卦の最も遠い極に在り、道を大きく履みはずして帰り道を失い迷うので、凶である。復の道から外れているので、様々な災いがある。道を失って天に逆らい人に背いて無道の師を起こせば、ついには大敗を喫し、災いは国君にまで及ぶであろう。故に凶である。十年の久しきに至るとも征伐する事は出来ないであろう。
象曰。迷復凶。反君道也。
象に曰く、復るに迷うの凶は君道に反すればなり。
【大意】
「迷復凶」とは、君たるの道に反するからである。
◯語句
災眚:災い。災は天災、眚は自ら招く災禍。
師:軍隊。
用行師:軍隊を動かす。戦争をする。上爻変は山雷頤䷚で、両軍対峙する象。
以其国君:以は及。
至于十年:何年たっても。久しきをいう。十は数の極。
参考:上爻の占考を引用付記します。
上爻変:
山雷頤䷚
ここまでの五爻と違って、卦の極にあるので悪い意味が多い。
人と協力すべきなのに、人から離れて独り行動するとか、自分に非があるのに他に喧嘩を吹きかけたり、さからうとか、そんな事が起こりやすく、起こってもいる時。意地を張って勝てるかといえば、天の時にさからうので、勝てる道理がない。
変じて山雷頤は、喧嘩となる。先方に正しい理屈あるのに横車を押すなど、交渉や談判でそんな逆の出方をして結局は敗れる。正震と倒震が向き合うとしても、内卦の方が先に身構えが出来ていて喧嘩馴れており、優先権があって、上六が負ける。それを根に持っていても、いつまでも勝つ時機は来ない上に、自分の身近の者にまで累が及ぶので、よくよく注意すること。
- 運気:よくない。つむじ曲がりなので誰も好意を持ってくれず、大局からみて道に叶わぬ事をしているので、失敗する象あり。謹慎第一。
- 事業:競争費などかかり過ぎて成果あがらず。費用倒れになって、累を近親に及ぼす。
- 願望:無理な願いだから通達しない。
- 縁談:横恋慕とか、自己過信が相手の気に入らないとか、短気・強情等が祟りうまくまとまらず。たとえまとまっても、長持ちしない。
- 病気:部位からは、頭痛。変じて山雷頤なので、胃腸障害、脾腹の痛苦などとみるが、外卦艮☶なので、不食、内卦震☳なので便秘、高熱で動くことが出来ないとみる。手当すれば治るが、病人がその薬は嫌とか、手術は怖いと言って避けるので、時を失して快復の望みがなくなるとか、そのような非常時に当たるので、良い医師の見立てを信じて、万全の手当を尽くすべし。
- 出産:有無は、腹ばかり大きくても中身が入っていないとして、想像妊娠ではないか。妊娠している人なら、大き過ぎて時期が遅れるとか、節制を守らずに流産するおそれありとか。
- 待つこと:破約をなんとも思っておらず、その日には来ない。
- 家出人:夫婦喧嘩などが原因で飛び出したものとみるが、戻る見込みはなし。
- 失物:見つかるが、損傷していて用に耐えない。
参考文献
加藤湖山、『易経逍遥』、Apple Books Store、2020年。
加藤湖山、『易経ノート』、Apple Books Store、2021年。
本稿に関するご意見質問等はメイルしてくだされば有難く存じます。
2022年
著者:加藤湖山
e-mail: kozan27ho@gmail.com
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