易経:宰相の罪:火風鼎
御来訪有難うございます。 2022年4月12日
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21世紀になって昔ながらの大規模侵攻(戦争)が起こりました。易経の中に宰相を扱う卦があります。「火風鼎」は、明者が治める世と、その逆の場合の世を併せて描いています。筆者は電子本の中にその卦についての解説を載せていますので、ここに引用掲載致します。
第24章 火風鼎:宰相の罪
火風鼎は五十番目の卦です。
鼎は「かなえ」とも読みます。
亨飪の重器で、画象䷱から鼎と名前がついています。初爻は足、二三四爻は実を入れる腹、五爻は左右の耳、上爻は
鉉として、全卦で
鼎と見えるでしょう。
亨飪の意味から、鼎は新しきを取るなりで、沢火革により古きを取り去ったあとで、物事を新たにする意味とか、下卦巽を従うとし、上卦離を明とし
麗くとして、これは明者に麗き
巽うの象ですので、天下の事は明者に麗き巽う時には、その道は必ず亨通するというような意味もあるようです。
ここでは、第二の意味合いの反証とも云える四爻を取り上げます。
- 四爻
九四。鼎折足。覆公餗。其形渥。凶。
九四は鼎・足を折る。公の餗を覆えす。其の形渥たり。凶なり。
【大意】
九四は陽剛不正。この卦の二三四爻は鼎の実であり、四では実が充満していて重い。支えるのは応爻である初六だが、柔弱にして重さに堪えず、足を折ってしまう。鼎は覆えり、天帝を祀り聖賢を養うためのごちそうも、ひっくり返る。
これを推して云えば、九四の宰相は己れの才力徳量を測らずして、妄りに国家の大任に当たり、表は陽爻賢良のフリをするも、内に不中不正の志と行いを以て任意随情に斡旋し、初六陰柔不才不中不正の小人を寵用する。これを以て国家の鼎と万民の餗を転覆する。その責と罪とは逃れ得るべからず。極刑たるの凶になる。
象曰。覆公餗。信如何也。
象に曰く、公の餗を覆えすとは、信に如何せん。
【大意】
「覆公餗」とは、この時ここに至っては実にこれを如何ともする事なし。
◯語句
餗:こながき。かゆ。あつもの。
公餗:天帝を祀り聖賢を養うためのごちそう。
覆:ひっくり返す。
形:刑罰。古本では刑。
渥:重い刑罰。極刑。本の字は、誅戮を被る貌を云う。
信如何也:まことにどうしようもない。
- 繁辞下伝
繁辞下伝の中で、孔子は次のように評価しています。今も昔も何も変わらない事に驚きませんか。
子曰く、徳薄くして位尊く、知小にして謀大に、力小にして任重ければ、及ばざること鮮し。易に曰く、鼎足を折り、公の餗を覆えす。其の形渥たり、凶なりと。其の任に勝えざるを言うなり。
及ばざること鮮し:禍に及ばないことは少ない。
参考文献
加藤湖山、『易経逍遥』、Apple Books Store、2020年。
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2022年
著者:加藤湖山
e-mail: kozan27ho@gmail.com
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