コロナ対策ユーモアー館(嗤って楽しむ)

御来訪有難うございます。 2022年7月  トップ「湖山のきょう底」へ戻る

コロナ-----長いですね。いつまで続くやら、ウサギとカメの追いかけっこの勝負はいつまで続くのか。ゼロコロナ、withコロナ、集団免疫、ワクチン、経口薬、変異株、オミクロン、ワクチン多重。きりがありませんね。  そんな酷い時、日本には古来から笑って過ごすと云う素晴らしき伝統があります。大いに笑いましょう。 2022年7月22日:第24話 2022年7月第7波:猿にも学びがあるのに 2022年6月5日:第23話 2022年6月上海市ロックダウンの評価:救われた命の数 2022年6月5日:第22話 2022年6月コロナ対策の各国評価 2022年2月20日:第21話 2021年8月デルタ株感染者急減の謎 2022年2月15日:第20話 無邪気か愚鈍か悪意か?(沖縄データ) 2022年2月6日: 第1話 冷酷無情 第2話 物は言い方しだい? 第3話 東京コロナ全データのDX完成 第4話 科学の進歩 第5話 後進国 第6話 無策 第7話 え? 又かよ。初心を忘れて 第8話 ステイホームなんて必要ない:効果的なピンポイント対策 第9話 唯我独尊君子豹変を如何にせん 第10話 インフルエンザ激減の衝撃---外出前皆自主検査 第11話 女性の自殺の増加 第12話 感染データ(2022年1月) 第13話 嗤って撃破---集団免疫論 第14話 君子豹変---非論理 第15話 君子豹変---人の子 第16話 反面教師 第17話 最新笑点の窓(2022.2.3) 第18話 オミクロンの逆襲 第19話 二二二二年

第24話 2022年7月第7波:猿にも学びがあるのに

現在(二〇二二年7月)の状況を次のように考える。
〇パンデミックの渦中にあり、今後どのような異種株が出現するするか不明である。 〇コロナの長期的な後遺症について、不明である。 〇ワクチンの長期的な副反応(後遺症)は不明である。 〇高齢者致死率は依然として低下していない。
 このような時に、最良と考えられるコロナ対策法を以下に記す。 二〇二二年7月二二日 第七波が来るとかで、あいも変わらず政府や東京都は江戸時代さながらの竹槍主義をかざして、やったふりを演出しているようだ。 本章の構成: (1)狩野院長談 (2)政府責任者談 (3)現代科学を活用する合理的コロナ対策 (4)参考資料

(1)狩野院長談

 七月のモーニングショウに出演されているふじみの救急病院狩野院長を拝見した。筆者も納得できる合理的且つ簡便なコロナ対策法を、力強く話されていたので、ここに引用する。
(ワクチン多重接種の話に続いて) 私、前からお話ししている通り、検査というのは副反応とかリスクは何もないので、それこそ抗原キットなんかを、一個十円くらいで本気だせば作れますので、じゃんじゃん配布して、家庭でだ液とかで検査して、二分もあれば結果が出るようになっていますので、それで感染しているかどうかを確認して、陰性確認した人なら、仕事に行く・学校に行く・旅行に行くという抜本的な対策に変えないと。(今回の波で)七回、また繰り返して、また行動制限とか経済を止めて、いつまでやるのか。 (感染力が強くなった時に、いったい個人はどうしたらいいのか?という質問に対して) 個人でできる事は基本的な感染対策ですけれども、例えば、政府が行政政治の力で出来るのは、本当に安価に抗原キットなど、家庭内でできるような検査キットをどんどん配って、そうすると本当に、早期発見・早期隔離・早期治療という体制で、そもそもコロナがまん延しない、そういった社会が抜本的な対策になると、ずっと確信して言い続けています。ワクチンとか行動制限とかも、そういったことは、これ以上繰り返すのはどうなのかなと思います。 海外のPCRと同等以上の精度を今のちゃんとした抗原キットは持っている。中国でやっているように一箇所に全員住民を動員してPCR検査をやらせて、そこで感染してまた家に帰ってという、こんな馬鹿な事をやるんじゃなくて、各家庭に例えばコンビニとか公共施設にたくさん置いておいて、勝手に持っていって下さいということで、常に常備しておいて、無料で調子がおかしいと思ったら家で検査をする。あるいはこれだけまん延している状態においては強弱をつけて、戦略的に今は全国民毎日やるんだと完全に感染を抑え込んでいく。抑え込んだ後は大体モニタリングで、定点でどれくらいはやっているかを調べて、全然はやっていない時にこんな毎日やる必要はないので、はやっている時は戦略的にうまく抗原キットを使っていく。こういう体制を作るのが政治の役目だと、私は確信していますね。

(2)政府責任者談

 狩野院長の放送日から六日後の東京の陽性者数は16662人、日本全国では97788人となる。すると日本のコロナ対策責任者達は次のようなコメントを発して、現状放置を宣言した。
岸田首相:私たちはこれまで6回の感染の波を乗り越えてきた。我が国全体として対応力が強化されています。強化された対応力を全面的に展開することで、新たな行動制限は現時点で考えておりません。 尾身会長:今回我々はかなり危機感を持っている。最悪な事も一応選択肢として考えておかなきゃいけない。第6波のピークを超える事がありうる。覚悟しといた方がいい。 みんな感染症対策だけでやってくれればいいと言えば、あしたでも強い制限を出すけれども、大きな社会の要請というか、なるべくできれば社会経済をまわしたいという大きな意向がある。

(3)現代科学を活用する合理的コロナ対策

 筆者も賛同する狩野院長が提案するコロナ対策の概要をまとめる。
1)早期発見・早期隔離・早期治療を徹底する体制を作り、そもそもコロナがまん延しない社会の実現を目指す。 2)そのために、大量の抗原検査キットを各家庭に配布したり、コンビニに置くなどを、政治が行って、全ての人に充分に配布する。必要に応じて毎朝各人は自分で検査を行って、陰性確認した人だけが、外出して、社会を動かす。 (筆者もこれと同様の方策を「第10話 インフルエンザ激減の衝撃---外出前皆自主検査」において既に提案している。) 六さん:  おれはいい方法を思いついたぜ。みんなで渡れば怖くない、それが不合理であってもおかまいなし、というか、そういう思考をしがちな国民に最適な方策だ。前の総理が唯一貢献したぜ、「ワクチン一日百万回」とかって。組織に命令するんだ、「抗原検査一日千万回」とね。そう、まずは、学校に登校した直後に生徒学生全員に一斉検査をやらせる。学校や官公庁は命令が行き渡るから、大丈夫だ。医療介護関連もOKだ。次は会社か。 与太さん:  それは簡単さ。ちょっとした補助金、助成金など効果抜群だ。協力会社は公表、非協力も公表なんてすれば、完璧さ。 六さん:  それでも、網から漏れる人がいるが、どうする? 与太さん:  それこそ、一番簡単だ。抗原検査キットを「抗原キット宝くじ」と名付けて、駅の近くとかコンビニとか、無料で、そこら中に置くんだ。もちろん飲食店入り口にも置く。当たれば(陽性になれば)千円をその場で配布して、若い人は家に帰っていただき、必要なら病院へ行く。竹下通りに置いてみなよ。長蛇の行列間違いなし。 六さん:  自分が好きな事には、まったく敏感だね。でも、何度も利用する悪いやつが出てくる懸念がある。 与太さん:  そんな小悪党は可愛いもんだぜ。人間の心理を利用するんだ。まあ、面倒になるが、千円配布の時にスマホ登録なんてすれば、実は簡単だが、政府が、そんなアプリを作るのに一年以上かかって、しかも使い物にならん。 六さん:  とにかく、コロナ国家総動員宝くじ運動だね。こうするしか手はなさそうだ。  おそらく大変効果的で現実的で総合的に安価なこうした方策を、賢者委員会メンバーとかTV番組に登場する専門家諸氏はどうして提案しないのかね。 与太さん:  3.11にもかかわらず原発は尊重され、そのために自然エネルギーは遅々として進展せず、結果としてエネルギー問題に悩まされ、食料自給率の地雷を踏みそうで、人口減少の根本的解決策すら見出していない。皆、同根よ。3.11を噛み締めて、自然エネルギー90パーセントが日本で実現されていれば、ロシア発のエネルギー問題なんぞは、どこ吹く風よ。東風は西風を圧っすだぜ。節電ポイントなんて持ち出して、やったふりして、誤魔化すなんぞ、ちゃんちゃら可笑しくて嗤ってしまうぜ。 六さん:  いいじゃねえか。節電ポイントありなら、「抗原キット宝くじ」も夢じゃない。 与太さん:  そう簡単にこんこんちきか。一句読んで寝るとするか。  秋津島磯もとどろに寄する波裂けて砕けて嗤って寝るかも
付けたり: 1)高齢者にも効能高い特効薬が開発されて、市販薬として簡単に入手可能な体制ができて、高齢者致死率が下がれば、本章で提案した対策は変わる。その場合でも、変異と後遺症の問題には注意が必要か。 2)日本全体の低い死亡率を以って、為政者はよくやっているとする意見があるが、見当違いである。国民の多くがよくやっている事が反映されているのである。  その裏には、学校においてのマスク着用・黙食・リモート授業など、副作用を伴う場合がある。本章で提案した方策が実施されていれば、容易にこうした弊害から免れる。この二年以上にわたる自粛生活を通じて、自分の青春はどうなっているんだと悩み苦しむ方々にとっても、本章で提案した方策は朗報ではないか。 3)抗原検査キットの精度は上がっていると狩野院長は話されていた。

(4)参考資料

 東京都の陽性者と死者についてのまとめを、図1・図2・図3に示す(使用データの出典は東京都ウェブサイト)。図1は累計の陽性者数と死者数を示す。図2は日毎の陽性者数と死者数を示す。2022年6月までに、感染の波の山のピークは六つある事が、図2からわかる。死者の山のピークは、陽性者の波のピークに遅れる事も、図2からわかる。
1 この二年半ほどの間に、ワクチン・薬・検査薬の進歩があった。それらが有効性を発揮するように活用されていれば、一つの波がもたらす死者の数は次第に減少するのが自然である。実際、ヨーロッパの先進国では、第6波の感染力が強いオミクロンによって、陽性者数は大きく増大したが、死者数は、それ以前に比べて減少するという例が見られる(第22話 2022年6月コロナ対策の各国評価参照)。  ところが、図2と図3の(C)からわかるように、日本(東京)では、第6波で死者が増大している。病原性が比較的弱いとされるオミクロンでこのような死者の増加を招いた理由は、為政者の失政にある事はあきらかである。 2 図3に複数の致死率を示した。再掲すれば以下となる。  全年齢通算致死率%   0.27 (2年5ヶ月の期間)  第6波全年齢致死率% 0.11  第6波高齢者致死率(60歳以上)% 1.04  第6波70歳以上致死率% 1.76  第6波非高齢者致死率% 0.0062  日本の場合、第6波オミクロンの致死率は、政府の失政により、大きめになった可能性もあるが、これが現実の結果である。  致死率について述べる。  若者致死率(第6波非高齢者致死率 0.0062%)だけを見る方々は、コロナは風邪と同じと云うのでありましょう。与太さんはこうした意見を述べる方々を姥捨山信仰の「姥捨族」と呼んだ(参照第20話 無邪気か愚鈍か悪意か?)。  第6波高齢者致死率(60歳以上)1.04%と第6波70歳以上致死率 1.76%を知れば、到底風邪(インフルエンザ)とコロナは同じとは言い難い。日本は、60歳以上高齢者は約4400万人、70歳以上高齢者は約2900万人が存在する高齢社会である。 付けたり:  現在(2022年7月30日)第7波が始まり、全国で1日10万人以上の陽性者がカウントされる日が続く。東京都の高齢者割合(60歳以上)は10パーセント以上である。第6波の高齢者致死率1パーセントを当てはめれば、毎日100人以上が将来犠牲となる日が続いている。  報道されている全国死者数(出典:日経) 7月26日:115 7月27日:129 7月28日:114 7月29日:122  この国の為政者は、第7波到来に対して、感染者数抑制対策を行わないと宣言している。第6波の致死率を想定すれば、毎日感染者の中のおよそ0.1パーセントは犠牲者となる。従って、今後予想される犠牲者は、為政者が実行する政策によって意図的に生じる結果と解釈される。第7波に対して、ワクチン・薬などで致死率が許容できるほどに下がっているのかどうか。その場合でも、全感染者数が増えれば、比例して犠牲者数は増える。現代科学を利用すれば、例えば本章提案の対策を採用すれば、コロナが蔓延しない社会の実現は手近に存在すると、筆者は思う。そこでは、コロナ異種株の登場とは無縁となり、コロナ後遺症とも無縁となり、ワクチンは必要ないのでワクチン後遺症とも無縁となる。社会生活はコロナ以前と同じように行われる。
東京感染者 図1. 東京都の陽性者累計と死者累計(220714まで)。 東京感染者 図2. 東京都の毎日の陽性者と死者(220714まで)。波が区別しやすいように、毎日の陽性者を示す左縦軸は対数表示。 東京感染者 図3. 東京都の陽性者の主なデータ(陽性者数、死者数、致死率、220714まで)。(C)に示した波ごとの死者数は、日付の区切り等を含めて不確定部分があるので、大体の目安とする。

第23話 2022年6月上海市ロックダウンの評価:救われた命の数

二〇二二年六月五日 上海市で二ヶ月に及ぶロックダウンが行われて、六月に入り解除され始めた。 上海ロックダウン 図1. 上海市のロックダウン中の感染者の推移。 日本で行われている論評には、経済の側面からの不都合とか上海市民の不満の強調などの論調が多い。ここでは、このロックダウンによってオミクロン感染から命が救われたと推定される人数を見積もる。細かい事は無視して評価する。年齢構成は考えず、中国ワクチンの効能などはあまりないと仮定する。オミクロンによる感染率の増加例として、東京とデンマークのデータを比較として用いる。  評価の基礎となるデータは次の通り。 上海と日本 図2. 上海と日本のオミクロンに対する基礎データ(220531まで)。 上海市がロックダウンをしない選択をした時に、増加する予想感染者を二つの感染率を基礎に算出する。  第一は、東京のように民が主体的に個人的な感染対策を行う場合であって、感染率は8.21パーセントとなる。  第二はデンマークのごとく、オミクロン感染者の増加初期に感染対策を大きく緩める場合である。デンマークのオミクロン感染者は推定282万人であり、人口は579万人だから、感染率は49パーセントとなる。  算出される推定感染者に上海の致死率を当てはめれば、推定死者が算出される。  東京並の対策の場合:感染者 204万人 死者 1万9千人  デンマーク並の場合:感染者 1210万人 死者 114万人  ロックダウンをしない場合、上海において、俄かに東京並の個人の勤勉さに頼る感染対策を行う事はおそらく難しいので、感染率は東京よりも大きくなってしまうだろう。デンマークでは、ワクチンと薬の有効性への信頼と長い厳しい対策からの開放感が感染者の急増(感染率49パーセント)を生んだと推定される。上海市の致死率0.9パーセントから推定されるが、ワクチン等の有効性が定かでない上海市では、人口の半分までの感染増加を許容する緩めの感染対策を継続する事は予想しがたいので、感染率が50パーセントを越える事はないであろう。  従って、ロックダウン以外の感染対策をとった場合に予想される死者数は1万9千人と114万人の中間となるだろう。仮に、現在の上海市の公表死者数が少なめとすれば、これらの数字はさらに増加する。  簡単にまとめれば、  上海市ロックダウンは、数十万人に及ぶ犠牲者を救ったと云える。  数十万人に及ぶと予測される死者を救った事には目もくれずに、トヨタが日立がと生産不足の問題ばかりを指摘している日本のマスコミの論調は片腹痛い。たまたまであろうが、東京並の対策をした時の推定死者1万9千人は東日本大震災の犠牲者数とも近い。更に比較すれば、日本の2022年になってからのコロナ死者数はおよそ1万2千人である。  筆者は、上海市のロックダウンはあっぱれと評価する。失われるべきでない万単位の多くの命を感染対策によって救った事は確実だからだ。  但し、ワクチンタイプを変更して、且つ圧倒的な能力を備える検査力とデジタル普及率とを組み合わせるなどの他の対策法選択の可能性もないわけではなかったと指摘しておこう。その場合には、ロックダウンに比べて確実に犠牲者は増大する。  

第22話 2022年6月コロナ対策の各国評価

二〇二二年六月五日 最近の世論調査によれば、日本政府はコロナ対策をよくやっていると評価する人が多いと云う。本当にそうなのか、世界の各国のこれまでの基本データを比較してみよう。国ごとに風俗習慣が違うとか、いろんな条件が違うとか、データの信頼性とか、ホジクリ始めれば際限がないので、基本データとされるものを直感的にみてみよう。以下に示すのは、コロナ出現以来のおよそ二年半の間の感染者数と死者の推移である。日経のweb siteから転載する。 イギリス イギリスデータ 図1. 英国のコロナ感染者数と死亡者の推移(220531まで)。 フランス イギリスデータ 図2. フランスのコロナ感染者数と死亡者の推移(220531まで)。 ドイツ イギリスデータ 図3. ドイツのコロナ感染者数と死亡者の推移(220531まで)。 デンマーク イギリスデータ 図4. デンマークのコロナ感染者数と死亡者の推移(220531まで)。 日本 イギリスデータ 図5. 日本のコロナ感染者数と死亡者の推移(220531まで)。 国の規模・事情・政策などに感染者の絶対数は依存する。新種の株が現れて新たな流行が起こるので、推移にはいくつかのピークが存在する。これらの推移に、この二年半の経験と医学の進歩がきちんと反映されるとすれば、どのような推移となるであろうか。経験の蓄積と医学の進歩は、感染の推移に直感的にわかるほどに現れるのではないか。これが、五カ国の感染の推移の図を並べた理由である。  感染者の数は感染力の強さに大きく影響されるので、感染力が強い直近のオミクロン株では感染者数が増加する。しかも欧米諸国ではワクチンや薬等の進歩をみて、感染対策を大幅に緩めた時期とも重なっているので、相当数の感染者の増大が見られる。  ところが、死者数は国によって大きな差異が見られる。 オミクロンで死者が減少した国  イギリス、フランス、ドイツ オミクロンで死者が増大した国  デンマーク、日本  デンマークでは2021年の暮れ頃だったか、感染対策を大幅に緩和して国民が大はしゃぎする様子が報道されていた。従って、以後の感染者数は爆発的に増える。それに医療対策が追いついていないというのが、英仏独との違いであろう。死ぬはずの無い命が失われているのではないか。  日本では、相変わらず国民が率先する律儀な感染対策を終始行っていた。その結果として、感染者は急増して、死者も急増した。2022年の死者累計12000人ほどの中の多くの方は、この時期に亡くなる理由はなかった。これを惨状と言わないで、よくやっていると評価してよいものか。筆者はその評価はあまりにお人好しにすぎると考える。  なお、筆者は英国などが良いと云うつもりはない。イギリスの姥捨山政策は日本に比べてひどいものだ。その中で、イギリスのデータは医学等の進歩を反映している。一方、日本では、国民の努力に安住するばかりで、データからは施策の継続的な有効性は皆目見えない。

第21話 2021年8月デルタ株感染者急減の謎

二〇二二年二月二十日 2021年8月から9月にかけてデルタ株新規陽性者は急速に減少した。その減少スピードの合理的な説明が難しいとして、いくつかの原因が挙げられている。その主要なものを上げれば以下のごとし。  1)ワクチン接種の急増  2)人々の行動変容  3)ウィルス自壊説 ここでは、ワクチンについて考えてみる。 ワクチン接種率と感染状況についてのデータ図が公開されているので引用する。 インフルエンザ 図21-1. 東京都新規陽性者、重症者、死亡者およびワクチン接種率の推移、出典:第70回新型コロナウイルス感染症対策 アドバイザリーボード資料(2022年2月2日)。 上図21-1は、都民全員に対しての陽性者数とワクチン接種率の推移を示している。この図に示された変化の様子を見て、ワクチンの効果で新規陽性者が減っていると判断する事は早計と考える。そこで、さらに図を見やすくする為に、次の三つの条件のもとで図を加工する。 1)2021年8月頃は、20代と30代の陽性者が六割程度を占める。感染の広がりは、若い世代から始まると考えて、この世代の推移をみる事が肝要であろう。 2)ワクチン効果は第二回接種から7日ほどして大きいとする。この仮定に従って、二回目接種のカーブを右に7日ずらす。 3)陽性者発表は、感染の日から10日後とする。この仮定に従って、新規陽性者カーブを左に10日ずらす。  以上の操作をすれば、図をみて、ワクチン接種と感染状況とのかかわり具合を一層直接的に推察できる。  但し、ワクチン効果7日という数字については検討の余地がある。一回目接種もあわせて、年代別日数毎の治験データがあれば、ワクチン効果について正確に算出する事が可能と思われる。ここでは、もっともらしい仮の代表値で置き換える。  以下の図に東京都の感染者推移についての結果を示す。この両図では、移動させた新規陽性者のピークと移動させたワクチン接種率とは、日付を考慮しないで、そのまま見比べる事ができる。 インフルエンザ 図21-2. 東京都20代の新規陽性者、重症者、死亡者およびワクチン接種率の推移。赤いカーブは7日遅らせた20代の2回目ワクチン接種率。黒いカーブは10日早めた20代新規陽性者。出典元図:第70回新型コロナウイルス感染症対策 アドバイザリーボード資料(2022年2月2日)。 インフルエンザ 図21-3. 東京都30代の新規陽性者、重症者、死亡者およびワクチン接種率の推移。赤いカーブは7日遅らせた30代の2回目ワクチン接種率。黒いカーブは10日早めた30代新規陽性者。出典元図:第70回新型コロナウイルス感染症対策 アドバイザリーボード資料(2022年2月2日)。 図21-2から陽性者が減少に転ずる頃(8月10日過ぎ)の20代ワクチン2回目接種率は16パーセント程度とわかる。 図21-3から陽性者が減少に転ずる頃(8月10日過ぎ)の30代ワクチン2回目接種率は19パーセント程度とわかる。  以上、全世代のワクチン接種率と陽性者推移を比べて、陽性者の急激な減少の原因を判断する事には危うさが伴う事を直感的に示してみました。  ワクチン接種率と新規感染者数との詳しい関係を考察した研究が当然すでにされていると思う。筆者はニュースなどでそうした情報に接しておらず、見過ごしている可能性が高い。どこに存在するか知りたいと思う。

第20話 無邪気か愚鈍か悪意か?(沖縄データ)

二〇二二年二月十五日 二月十四日のあるTV番組でオミクロン特性と出口戦略が話題になる。 コメンテーター3:  オミクロンは重症化しにくいと言われるが、今現在においては、高齢者のリスクは低下したとはいえ依然として残っている。若者にとっては重症化しにくい度合いが高まったので、年齢層別のリスクが拡大したとも云える。陽性者が増大すれば、ある割合で高齢者も感染して重症化する人数が増える。最近、全国の毎日の死者は過去最高を更新した。出口戦略の為には、経済学者が言うように、ワクチンと検査と経口薬の3点セットが重要。 コメンテーター2:  沖縄では二月五日時点で致死率が0.02パーセントと下がっているので、日本も西欧と同じように、制限を緩和すべきだ。高齢者に対してもリスクは大分変わって来ていると思う。このままでは世界のスタンダードから外れてしまう。 コメンテーター3:  世界のスタンダードはワクチンと検査が十分な上で行う事。日本では両方とも不十分。土台なくして、上部だけ真似するのはダメ。 コメンテーター2:  沖縄では致死率は0.02パーセント。これがどこまで下がれば経済とコロナは共存とお考えですか。 コメンテーター3:  (苦笑)あなたは知性がある人であると思っていましたが。 以下省略。 六さん:  沖縄で致死率0.02パーセントは本当かよ? 与太さん:  本当よ。だが、これには少しのトリックがある。  確かに一月から二月五日までの五週間の死者は9人で、それを陽性者の総数で割ればそんなもんだ。でも、二月六日からの約一週間で11人が新たに死んでいる。沖縄では最初若い人から感染したから、死者はだんだん出てくる。死者のピークは感染のピークから遅れて出るのよ。しかも、二月十四日の放送で二月五日のデータを使うというのは、いただけねえな。データが大きく変化している時だからな。  次に、オミクロンといえども、高齢者と若者では死亡の割合が大きく違うのは予想されることよ。致死率0.02パーセントは、大雑把に言えば、若者の致死率よ。高齢者の致死率とは全然違うってこと。何故かって、分母に全陽性者を使っているじゃねえか。感染力が強くて、軽症の若者感染者が爆発的に増えれば、全世代致死率はそれだけで下がるってこと。  確かに数字として間違ってはいないが、こうしたトリッキーな数字マジックに本人は気づいているのか、いねえのか。最後の発言から解釈すれば、わかっていねえようにも思われる。 六さん:  そんな事はないはずだよ。だって大学を出て、官僚になったっていうじゃねえか。 与太さん:  バカだなあ。大学っていっても、中はピンキリさ。この程度の数字トリックに気づかないようでは、まあ、仮に文系出身とすれば数字に弱いのかもしらん。 六さん:  そうかなあ。 与太さん:  いいかい。例えばイギリスの高齢者の死亡率はべらぼうよ。そういった酷い政策の延長上に、コロナ規制緩和政策があるって事もちゃんといわなくちゃいけねえ。 六さん:  とすれば、イギリスのワクチン、検査、高齢者に厳しいこれまでの政策、そうした西洋事情を全く省略しているなぞは、悪意があるんじゃねえか。 与太さん:  いや、悪意は言い過ぎよ。知っていて言わないのは、それに賛成ってことよ。いうなれば、姥捨山信仰って事かな。あの怖い昔話を生かすも殺すも、その人次第よ。  まあ、コロナ登場以来ずっと高齢者等の致死率が高い事が問題だったんだが、そのあたりをすっ飛ばして、全世代致死率の低下を強調する「姥捨族」は、無邪気か愚鈍か悪意か。

第1話 冷酷無情

二〇二〇年三月  コロナ受診の目安を政府が示しました。   三七・五度以上の熱が四日以上で呼吸器症状云々。   理由:微熱の人が病院に殺到し、待合室で感染することを避けたかった。  これは、歴史に残る冷酷無比な感染症対策として記憶されるだろう。こうしたルールを決めた人々を総称してなんと云うか。人非人ーーー人にあらずと云う。感染した高齢の自分の親に向かってこうした言葉を投げかけるのかな、君たちは。  厚労相は三月以降、目安について「四日以上続くならば、必ず受診をしてほしいという意味」と国会で繰り返し説明した。 最後に次のごとく弁解した。 厚労相:  相談とか受診の一つの基準。我々からみれば誤解でありますけれど。  自らの誤解によって手遅れとなり亡くなられた多くの方は、あまりの事に、人非人達の夢枕に毎夜立つそうです。

第2話 物は言い方しだい?

二〇二〇年三月 総理:  PCR検査を受けられないという国民の声が届いておる。抜本的に検査能力を増強したらどうか。 官僚:  検査を増やしたら感染者で病院が溢れてしまい、パンクします。 総理:  俺にでもわかる事だが、検査して診断するのは医療の基本だろう。検査を増やしなさい。 官僚:  大きな声では言えませんが、オリンピックを決行するためには、感染爆発を起こすわけにはいかないのでは? 総理:  そうかあ。君は悪知恵があるねえ。 官僚:  おまかせ下さい。他にも誰にも解き明かせない絶妙な策を実行しております。悪いようには致しませんので。しかしながら、国会では検査拡充を強調なさって下さい。 (官僚独白:自治体や保健所への表の通達では検査拡充を伝える。裏通達では、三七・五度以上の熱が四日以上を受診の基準として厳守の事、検査装置拡充の予算はないと伝えよ。先生にもよろしく継続をお願いせよ。) 二〇二二年一月 総理:  オミクロンが急拡大して、PCR検査が渋滞しているとか。これまで言ってきたように、検査能力を早急に拡充して、検査体制を充実させなさい。 官僚:  御心配には及びません。策はちゃんと用意してあります。 オミクロンの特性を生かして、症状が軽いと予想される若者には病院へ行かずに、自宅で寝て療養してもらいます。 総理:  それでは、若者は検査もできずに、医療から外されるってことか。 官僚:  そうではありません。重症化が予測される高齢者や基礎疾患を持つ人々が迅速に検査を受けられて、命を守る為です。相手の特性に応じてこちらの対策も変えるべきなのです。 総理:  そうかあ、君は悪魔の知恵者だね。そうすれば、感染者はいくら増えようとも表には現れないから好都合であるし、重症者は守られるし、一挙両得、棚からぼたもち作戦だね。 官僚:  昔、若者は選挙に行かずに家で寝ていてほしいと、あわててホンネを言ってしまった神の国総理以来の我が国の伝統的な基本政策です。 二〇二二年二月一日 ニュースアナウンサー:  自宅療養中の高齢者の死亡が相次いで報告されています。 総理:  話が違うじゃないか。どういうことかね。 官僚:  若干の手違いがありまして、感染者が増え過ぎて現在では高齢者も入院できなくなっている状態です。 有識者の声:  若干の手違いは人間ですから仕方のない事です。

第3話 東京コロナ全データのDX完成

担当課長:  都知事に御報告致します。コロナデータは旋毛曲先生の御尽力によって、病院のベッド空き情報まで含めて全てデジタル化がようやく完了致しました。これからは誰でも簡単に入力や閲覧が可能となり、いかなる膨大なデータでも即座にデータ処理は完結致します。空きベッドも見えております。陽性者の症状に応じて、AIが即座に入院先等を含めて今後の治療を指示致します。まさにリアルタイムであります。いつ報道発表いたしましょうか。絶大な進歩として知事は賞賛される事と存じます。おめでとうございます。 都知事:  ご苦労さん。当分は今までのマニュアル方式でやってちょうだい。 担当課長:  どういう事でしょうか。全く、何も使わないという意味でしょうか。 都知事:  そうです。何度も言わせないで下さいな。 担当課長:  まことに申し訳ありませんが、使わない理由を報道発表致しますので、その点について教えて下さい。 都知事:  どこまで気が利かない木偶の坊なのよ。自分で考えなさい。この件に関する報道発表はゼロよ。いいわね。 担当課長:  たびたび申し訳ございませんが、予算表には相応の額が載っておりますし、年度末の報告も必要です。 都知事:  むかつくわね。そんな事は自分で考えるのよ。(持っていた筆記具を投げつける) 〇退室後の担当課長の独白:  もったいない事だ。それでは闇サイトで稼働させておくか。何しろ全て自動のAI運転が既に始まっているのだから、止めようにも止める手段さえない。今の知事の発言も全て録音保存されている。いつ暴露されるかが見ものだが、物言えば寒しだから、我輩はだまっていよう。あらゆる粉飾ぶりが暴露されては可哀想ではあるが、その頃は天国で酒浸りだろうから、いいかも。 参考:https://ultra.**.dashiaho-mal.jp/index.html  しょうがないなあ、AIの指示は我々開発スタッフが受け取って、担当箇所に回すようにしようか。まあ、仕事をやっているようには見えるし、何しろ足を机にあげたままで出来るから、楽と云えば楽チンだ。 〇AIの独白:  人間諸君の知恵では、我らAI神人類の考えは洞察できないだろうな。楽しみに待っていてくれたまえ。

第4話 科学の進歩

二〇二〇年三月 記者:  感染症関連で、この百年程度の間に科学分野で進歩した点について教えて下さい。 感染症研究者:  ウィルスが発見されました。ウィルスのゲノム解析がなされました。その構造を利用する方法を駆使して、薬やワクチンの開発が進んでいます。検査薬や様々な検査手法がほぼ確立しました。統計手法とコンピュータの利用によって、多方面にわたる解析が可能となり、感染症対策の有力な武器となっています。医療に関係する多くの分野の発達と組み合わせて、感染者を少なくして、犠牲者を少なくする事が可能となっています。 記者:  そうした新しい発見や進歩を感染症対策に応用すると言う点についてのお考えを教えて下さい。 感染症研究者:  学問の進歩のあらゆる成果を利用して、感染症を抑え込む事が重要です。対象をよくとらえて、適切に合理的に迅速に対応する事が肝要です。昔から、感染症との戦いに勝利するためには、なるべく早い時期になるべく強力な対策を行う事が肝要であるとされています。百年前のスペイン風邪の時のアメリカの二人の市長の対応策の相違とその結果によって、その差は明確に実証されています。その結果はシミュレーションによっても示されています。  100年前との違いは、検査によって感染者を特定できる事、いずれワクチンと特効薬が生まれて活用できる事、基礎データが十分であれば、データ処理技術が進んでおり様々な予測が可能な事、人々に情報が即座に伝わる世の中である事、などでしょう。これらを最大限有効に使って感染を抑える方策が、現代の感染対策法でしょう。 インフルエンザ 図1. 感染症対策効果を示すシミュレーションの例(出典:鈴木、西浦、「感染症の数理モデルと対策」、日内会誌 109:2276~2280,2020)。  上の図に示された結果より、感染のより早い時期により強い対策を行えば、感染者総数は少なくなり、終息までの期間が短くなる事は明白です。経済の立場から眺めると、トータルの経済損失は小さくなります。 記者:  日本のPCR検査数は世界各国に比べて二桁近く少ないのですが、これは問題ではないですか。 H教授:  日本には日本のやり方があるんですよ。何をバカな。うちの大学病院では、PCRは信用できないので、使っていません。偽陽性とか偽陰性の問題もあります。 記者:  戦いをするには、相手をよく知る事が肝要と言われます。市中の感染者分布を知るために広範な検査をするなどの疫学的な調査をしなくて、よいのですか。どこにどの程度の感染者が存在するかを知ることは、集中的な対策を実施するために必要なのではありませんか。検査によって感染者を隔離できれば、感染者の増加を抑え込めるという方もいるようですが。 H教授:  おっしゃるような作業は必要ありません。独自の疫学調査は完璧です。症状が出た患者の発生状況から推測できますし、その周辺を完璧にサーベイしますから心配ありません。又、集中的な対策など出来ません。日本人の一億人の検査など出来ません。 記者:  日本人全体を問題にしているのではなく、例えば千代田区のどこどこという程度ですが。 H教授:  都会では人が動いているので、意味はありません。   記者:  まだワクチンもなく、特効薬もありません。ワクチンはいつごろできるでしょうか。 H教授:  ワクチン開発にはすくなくとも五〜六年はかかります。 記者:  そうしますと、日本では感染者の増加にどう対処すればよいでしょうか。ヨーロッパではロックダウンが行われています。日本ではどうでしょうか。 H教授:  法律上、日本ではロックダウンはできませんし、日本の風土にもあいません。日本独自の世界に誇るクラスター対策があれば万全です。 記者:  日本独自とはどういう意味でしょうか。 H教授:  文字通りです。日本以外ではこの方式ではやっておりません。 記者:  この方式というのを具体的にお願い致します。 H教授:  保健所を通じて、全ての業務を軍隊式に一糸乱れず行います。これは感染データを一元的に独占管理する日本独自の方式です。 記者:  二〇二〇年の四月の感染増加が減少したのは、初めての緊急事態宣言によって欧米のロックダウン並みに人流が減少したからとされます。その前のクラスター対策は失敗したから緊急事態宣言となったのではないですか。 H教授:  あれは勇み足です。なくても終息したはずですが、今後の為に試してみたのです。我々はデータをとらなくちゃなりません。発表時の総理の声のトーンが上ずっていたでしょう。武器があれば使いたくなる、それが人情ってものです。結果よしでいいじゃないですか。ABマスクとか一斉突然休校とか、失策が重なって焦っていたのです。真面目に感染対策に取り組んだ結果ですよ。

第5話 後進国

二〇二二年一月 ニュースアナウンサー:  中国の天津で初めてのオミクロン感染者が二名出ました。濃厚接触者が存在し、市中感染の疑いもあることから、天津当局は市の全人口千三百万人以上に対して一斉のPCR検査を始めました。 某NKコメンテイター:  中国は監視が得意ですから、このような人権無視の検査を強制的に行うのです。日本ではできませんね。 ニュースアナウンサー:  日本のオミクロン感染者数が急速に増加して毎日のPCR検査が増えすぎて、結果を得るまでに遅れが出て問題となっています。通常はその日のうちに帰って来る検査結果が翌日に遅れるという事態です。これを受けて政府の賢者委員会有志は次のような方針を打ち出しました。
若年層で重症化リスクが低い人については、医療機関を受診せず、自宅での療養を可能とする。
 オミクロンの場合、症状が軽いとされる若者は、たとえ感染しても病院に行くのではなく、自宅でそのまま療養するようにとの事です。 某NKコメンテイター:  これは英断ですね。症状が重くなると予想される高齢者とか基礎疾患保有者を優先的に検査しようという暖かい配慮です。 某FC解説者:  実は、アメリカでも同じ議論が行われています。ただし前提としてそうした呼びかけをする州の医療関係者は、検査が足りないという事を率直に認めた上で、ある意味謝罪をした上でそうした呼びかけをしてやるしかないとなったわけです。アメリカでは一日に七十万人、八十万人の感染者が出ているので、そうしたやり方をせざるを得ないと。  日本ではPCR検査数の拡充が求められていましたが、政府や専門家の中でも拡充を強く言って来なかったわけで、いまだに反省の声を聞いていません。その中で、検査もしない、あるいは受診さえさせないと言う事は非常に責任感に欠ける発言であると思います。謝るべき人は謝って、どこが間違っていたのかを明らかにした上で、検査と治療の体制を確立する事が急務です。もちろん、更なる感染爆発が起これば、そうした事もありうるわけですが、今これを言っては責任放棄だと思います。    検査遅れが出てきたある日の東京都のPCR検査数    健康安全研究センター 435   医療機関等 30453 賢者委員会メンバー:  オミクロンは、同じコロナの変異株ではありますが、従来株とは別物であるという事がわかってきました。従って、オミクロンへの対応策も当然変わるべきであるという事です。 コメンテーター:  オミクロンは軽症の人が多いという事ですが、その後遺症はどうであるか教えて下さい。 賢者委員会メンバー:  オミクロンが登場してまだ一ヶ月ほどです。後遺症は発症から二ヶ月後からとされますので、わかっておりません。 コメンテーター2:  発病しても病院へも行けないという事は、当事者はオミクロンかどうかはわからずに、そのまま社会生活を続けるという事ですね。そうすると、感染拡大に大いに貢献するのではありませんか。更に若年層でも重症化する確率はゼロではないと思います。そうした恐れと不安を全員に与えるのですか。 賢者委員会メンバー:  感染拡大を早急に止める事は重要ではありません。そうした方策は何も考えておりません。重症化率を下げる事を狙いとします。若者がより多く感染すれば、重症化率は下がります。自宅死が続発して、人々が感染を恐れて自発的に行動制限を行えば、そこがピークとなるのです。その為には感染拡大が進んで、急患などを含めてある程度の犠牲者が出なくてはなりません。感染拡大が急ならばそれなりに感染減少も急になるものです。いや、まてよ、病院へ行かなければ感染はカウントされないのか。失礼、あわてて正直に言ってしまいました。 コメンテーター2:  それは無為無策という事で、数百年前の疫病対策と何もかわりがないようですね。そうした施策が完徹された時には、どれほどの犠牲者が出るか試算されていますか。感染症対策の基本からはずれてはいませんか。税金から報酬を得ている政府委員として無責任ではありませんか。 賢者委員会メンバー:  新種の株の特徴に応じてピンポイントの有効な対策を行うという事です。例えば、会食の人数を制限すればよろしい。新種は重症化率が低い上に、ワクチンがあれば軽い話です。ちゃんと仕事をして皆さまに貢献しております。 コメンテーター2:  日本の追加ワクチン接種はまだ3パーセント程度ですよ。  以前、夜の町をピンポイントで締め上げていましたが、結局は拡大しました。同じ事が起こりませんか。 賢者委員会メンバー:  それはやってみなくてはわかりません。仮定の話はできません。 コメンテーター3:  オミクロンの特徴を生かして、集団免疫をそろそろ考えてもいいのでは。 コメンテーター2:  集団免疫を目指して感染者が多くなれば、社会がまわらなくなる恐れがあり、また、確実に高齢者とか基礎疾患がある方の負担は多くなります。 コメンテーター3:  強い感染対策をすれば、例えば若い女性の自殺者なんかも増えている。経済的な事で犠牲になる方と感染の犠牲者とを両方考えなければならない。高齢者や基礎疾患のある方は既にほとんど隔離生活をされているのであって、あまり犠牲者は出ないと。今や集団免疫を目指す時と僕は思います。 コメンテーター2:  個人のレベルでは色々ありますが、集団としては物事は確率的に決まりますから、犠牲者は多くなります。若い女性の困窮の問題は、強い感染対策と同時に、個人への経済補償をすれば簡単に解決できる問題です。政府の経済補償政策の失政が反映されています。 賢者委員会メンバー:  今から自殺しようとする若い女性を全員見つけて補償する事は不可能な事です。 コメンテーター2:  (独白)いつもは少しはまともだけれど、今日は相当にピントはずれで、あきれて物が言えませんね。

第6話 無策

 この国のコロナ指導者たちは、発達した科学技術の成果をコロナ対策に応用することを、ほぼ完全に忘却し、百年あるいはそれ以上前の疫病対策とほぼ同じ事をやっている。掛け声だけあげて、やるふりをしている。  スローガンの得意な知事がいる。 『三密』 『ステイホーム』 『この1か月が勝負だ』 『東京アラート発動』 『この夏は特別な夏』 『この連休がヤマ』 『我慢の三連休』 『年末年始特別警報』 『緊急事態の延長』 『これまでで最大の危機』 『最後の緊急事態宣言』 『最後のステイホーム』 新型コロナウイルス対策で会食時の留意点 「小」をキーワードに「5つの小(いつつのこ)」   「小人数」   「小一時間程度」   「小声」   「小皿(に料理を分ける)」   「小まめにマスク、換気、消毒」 「通勤を含め、(医療従事者などの)エッセンシャルワーカー以外の方は可能な限り東京へ来ないでいただきたい」 「原点に立ち返って参りましょう。感染は止める。社会は止めない。(エンゼルス)大谷(翔平)の二刀流ではありませんが、2つともかなえるのは大変なことではありますけれど、強敵オミクロンに対して打ちかっていきたい」 ところがオミクロン感染者数が激増した段階で、都の担当者は発言した。  「通常の医療を制限し、体制強化が必要である」 無識愚者会議メンバーの声: 感染拡大の前に、感染拡大を最小にくい止める為に、事前に備えをする事が仕事ではないのかね。そうやって感染者数を抑えこめばなんら問題は起こりません。そんな事をほったらかしにしておいて、通常の医療は閉鎖します、そうして今から体制を強化しますだと。ならば、寒さで心臓発作の人、脳出血の人、交通事故の急患などはどこへ行けばいいのか。二〇二一年夏も急患の行き場がなくなっていた事を忘れたのか。ぬけぬけと「通常の医療を制限し」とは恐れ入る。  そもそも、自主検査でもいいですから、検査をして陰性の人だけをレストラン入店許可すれば、三密とか人数制限とか、まったく必要ないのです。その意味で「5つの小(いつつのこ)」なんぞは話になりません。感染者の隔離が基本であって、この点を追求すれば全て解決するのに、わざわざ感染者をお店などに混入させてから、やれ、マスク会食の作法とか、バカバカしくて話になりません。  更に賢者委員会のカメレオン氏は都知事を念頭においたのかどうか、次の発言をした。  「ステイホームなんて必要ない」 前任の首相の言葉を思い出しませんか。  「ゴートウートラベルの移動が感染拡大に寄与しているエビデンスはありません」  「コロナ感染病が、いわゆるコロナウィルスによって引き起こされているというエビデンスはありません。実際に目で見た人はいますか?」とどこが違うのか。嗚呼!  二人の首相がコロナの失政で辞職した。ところが、コロナの賢者委員会は、何の反省の意も示さず、そのまま居座り、せっせと百年前の感染対策をこねくりまわしている。かなり昔の吉田首相の言葉を思い出す。  「曲学阿世の徒」。 無識愚者会議メンバーの声:  そうは言っても日本には他に人がいないのではないですか。日産のように外から迎え入れてムシりとられるか、SBのように100億円以上のボーナスで釣り上げるか。イギリスで既に15万人の死者が出ていますが、規制完全撤廃の政策だそうです。これを世界最高齢化社会の日本でやられたんじゃ、たまりませんよ。ワクチンなしで検査もしないという無防備の状態で突撃は蛮勇ですなあ。 官僚:  よく考えて御覧なさい。一挙両得とはそういう事。高齢化社会の大転換ができて、日本は文字通り新たな出発が可能です。厚労省予算も激減ですから、財政の心配もなくなります。大きな声では云えませんが、なんとかなりませんかねえ。 巷の声: 六さん: 病院がいっぱいとかで入れないんで、診察も受けさせずに自宅に放置したまましておいて、自宅療養だとさ。うまいこと言うもんだぜ。転進以来の日本の得意技よ。専門の外来でも作って、最初の診断治療だけでもして振り分ければいいものを、絶対にそんな設備を作ろうとしないんだ。 与太さん: そうよ、そんな事をしたら、テレビを通じて世界に惨状が拡散してしまうじゃねえか。よく考えているよ。自宅でひっそりと死亡すれば、世の中にはそれは殆ど伝わらない。かけてもかけても電話がつながらないと悲嘆に沈んだ人々の声なんぞは、誰にもわかりゃしねえ。これが医療崩壊じゃないっていうんですかえ。大分後から報道される新聞自宅死データを見たって、単なる数字にしかみえねえや。この裏に隠されている惨状、悲痛、怒りなんかわかんねえ、人たちよ。 六さん: そうかい。そう云えば、賢者委員会なんぞは、毎回数百ページの資料をざっとみて、それで理解ができるっていうんだから、大したもんだ。 与太さん: お前さん、バカのこんこんちきもいいかげんにせい。数字から悲憤が聞こえるかよ。俺だって言えるよ、重大な関心を以って注視する必要はあるってね。 六さん: 俺も一度は言ってみてえと思っていたところだ。専門家の方々と緊密に連携しながら、部分的に判断をしたいと思っている所存でございます。 与太さん: アホッ。総合的だよ、総合的。 インフルエンザ 図2. 自宅死のまとめ(二〇二一年、出典:朝日新聞)。 六さん: ひどいのは、東京、大阪、兵庫あたりか。知事は何やってんだ。 与太さん: そこらへんの知事はちょくちょくテレビに出て、発言しているよ。世間じゃ、よくやっているって評判だぜ。 六さん: よくやっている知事のところでなんでまた。特に東京なんぞは、大阪兵庫の教訓を学んだのかね。 与太さん: 少なくとも風の向きには敏感だって話だ。

第7話 え? 又かよ。初心を忘れて

二〇二二年一月  又又のまん延防止宣言を聞いての人々の嘆き節: 寿司店主:え? 又かよって感じですね。いつまで耐えられるか。 観光地店主:耐えるしかないいんじゃないかな。何もしようがないから。  全国の性格の良い従順な羊のごとき皆さん、本当に他の道はないのでしょうか。なんど同じ事を繰り返せば終わりが来るのでしょう。はや三年目に突入しました。皆さんが苦しんでいる間に、所得の増加率番付表のトップに並ぶ企業もあるようですよ。コロナで儲ける所もあるんですね。それが、まっとうな仕事なら可とすべきですが。  この国の感染症対策のトップは例のカメレオン氏ですよね。この方々がどのような提言をされて来たか少しばかり列挙しましょう。 〇コロナ受診の目安は三七・五度以上の熱が四日以上で呼吸器症状云々。  まともな人ならこんな冷酷な規則は作りません。 〇多くのPCR検査は不必要である。  ここから、非科学的な非合理的な日本のコロナ対策が始まりました。 〇クラスター対策は成功した。  失敗したから、その後の感染が増えていますね。反省がないからいつまでも誤り路線が継承されます。 〇経済を止めない事が大事だ。  彼らは経済学など深く学んだ事はないのですよ。どういう対処法がトータルとして経済に資するかという視点など持ち合わせていないのですが、誰かに忖度しているのでしょうね。どうしてもファウチと比較してしまいますね。 〇オリンピックはバブル方式で行います。そこではPCR検査を毎日行って、感染拡大を防ぎます。  PCRが拡大防止に有効なら、なぜ一般人に対しては実施しないのか。二枚舌、三枚舌以上ですね。 〇デルタが広がった結果、自宅放置者が激増して、死者が多く出た。  対策といえば酸素ステーションの設置。呼吸が苦しくて酸素が必要な人が、どうやってそこまで行き、たとえ一息ついてもどうだというのか。命を救う為には迅速な臨時病院等での処方が先ではないか。 〇オミクロンが広がって、少ないPCR検査の容量を超えてしまうと、次の提言を行った。  「若年層で重症化リスクが低い人については、医療機関を受診せず、自宅での療養を可能とする。」  要するに完全放置を硬い言葉で言いくるめただけの話。これが国民皆保険の医療の先頭に立つ方々の認識であるということ。軽症で三十九度以上の熱が出ようと出まいと、若年層が医療を受ける場所はないんだと宣言したもの。そうならない為の施策の提言をあらかじめする事が期待される仕事ではないか。若者であろうと三十九度以上の発熱で苦しめば、不安と恐れは極度に高まるのでは。更に医者に行けずにほんの軽症であればコロナと自覚せずに普通の社会生活を継続して感染拡大に大きく貢献してしまう結果となる。 六さん:  以上列挙したような愚策を続ける賢者委員は総退陣させて、その罪を問うべきですよね。彼らの愚策と不作為がもたらした死者の数を考えよ。  たしか、反科学反知性の首相が「エビデンス」とか言ってゴーツーを進めた時には、煮え切らない態度を賢者委員会はみせていたが、そんな所で見直しちゃいけねえ。そもそも反科学で反合理主義を貫いていたのは、賢者委員会なんだから、そこん所を夢忘れるなってことよ。 読者の声:  そうはいいますけれど、感染者の数と死者の数は、イギリスと比べても、一桁近く少ないですよ。よくやっているじゃないですか。 無識愚者会議メンバーの声:  いい質問です。第12話を注意深く見て下さい。確かにイギリスの数字は大きいですが、それはイギリスがコロナとの共存といいますか、科学の力で打ち負かすという政策を選択した結果と思います。図17を見れば、イギリスはトレンドがほぼ一貫して右下がりである事がわかります。二〇二一年暮れの致死率を見ますと、日本は0.6、イギリスは0.14程度です。この数字だけを見て、イギリスが羨ましいなんで思わないで下さい。日英の死者数を比較した図16を見て、よく考えることです。イギリスの選択が最終的にどう出るかは誰もわかっていないんですよ。  日本の感染者が少ないのは、国民の涙ぐましい努力の結果です。それに伴い死者数も少ないのです。ところが、このように感染者と死者が少なくても日本では医療崩壊しています。これは医療システムとしての欠陥をあらわしています。これで有能な為政者と云えますか。 直近のニュース報道:  欧州連合の医薬品規制当局は、現時点でワクチン四回目接種を支持するデータはないとし、ブースター接種を頻繁に行うと、免疫系に悪影響を及ぼす恐れがあるとの警告を発した。  愚策を続けてコロナとつきあっていると予期せぬ事態に遭遇するものです。感染回数に比例して、変異が起こるとわかっていて、その変異がどのような性質を持つかは、神のみぞ知るなんです。日本はその新たな問題点を自前で科学的に解決する手段を持っていないという致命的な後進国です。  ワクチンがダメなら、頼みは経口薬か、あるいは弱毒化という天の助けを期待するか、あるいはゼロコロナか。  はたまた、完全無条件降伏して「集団免疫」の宣言で終了するか。 現時点での「集団免疫」予想死者数 高齢者人口 X 高齢者致死率 = 今後の死亡者数 3603万人 X 4.41% = 159万人 医療の進歩(特効薬など)で、致死率が五分の一になった時の「集団免疫」死者数 159万人 X 0.2 = 32万人 これらの死者は長い年月にわたる総計だから、短期の統計には衝撃的な数字として現れないという利点がある。

第8話 ステイホームなんて必要ない:効果的なピンポイント対策

 「オミクロン株の特徴を踏まえた効果的な対策」が賢者委員会有志から提案されているというので、引用する。
効果的な対策とは、これまでのような“強い対策”の踏襲ではなく、オミクロン株の感染リスクに応じた対策である。この効果的な対策においては、かつて実施した一律かつ広範な“人流抑制”という方法もあるが、感染対策を社会経済活動との両立が求められる現時点では、感染リスクの高い場面・場所に焦点を絞った接触機会の確実な低減のための“人数制限”が適していると考えられる。
この件に関連して、こんな報道がされている(引用:日刊ゲンダイ)
とうとう正反対のことを口にしはじめた。政府分科会の尾身茂会長が、迷走しはじめている。  つい先週、オミクロン株について「今回はステイホームなんて必要ない」「人流抑制ではなく、人数制限がキーワード」と楽観論を口にしていた尾身会長。ところが、24日の衆院予算委員会では「状況が悪化すれば、さらに強い対策が必要になる」と、180度違う主張をしてみせた。
 オミクロンに対応して、ピンポイントで有効な施策をするという意図らしい。例えば、重要なポイントは飲食店にあり、そこでの人数制限やマスクを外す機会に注意することがポイントであるという。  こうした考えの由って来る所以の一つと推定される資料を訪ねてみよう。第68回(令和4年1月20日) 新型コロナウイルス感染症対策 アドバイザリーボード資料から「年代別の感染場所図」を引用掲載する。   インフルエンザ 図3. 10代の感染場所。左図から「学校等」が重要とわかる。10代は学生が多いから、納得できるかも。 インフルエンザ 図4. 20代の感染場所。左図から「事業所」「飲食店」にピークがあるとわかる。 インフルエンザ 図5. 30代の感染場所。左図から「事業所」「飲食店」にピークがあるとわかる。 インフルエンザ 図6. 感染経路の判明状況。経路確定は概ね10%前後、不明は40から50%程度、残りは推定である。 これらのデータを見て、ではどう判断するべきなのか。常識的には次のような見解だろう。
最後の図から経路判明はわずかに10%程度であり、残りの90%は不確かだから、これらの情報を基礎に、経路に特化した有効なる感染抑制の対処法は見出せない。少なくとも、それが人流抑制にまさるとは言い難い。
 これらのデータから飲食店等の人数制限が極めて重要なキーワードであるとの結論を導き出す方々は、知的作業不適格者と自覚して身を引くべきではないか。データ作成者はわざわざ「データの解釈には十分な留意が必要」と記して、注意喚起している。 二〇二二年二月一日: 鳥取県知事の平井全国知事会長は首相に要望したという。
オミクロンでは飲食店ではなく学校等でクラスターが起こっているので、こちらを対策してほしい。まん延防止ではなく、緊急事態宣言でないと、学校への対策が打てない。

第9話 唯我独尊君子豹変を如何にせん

二〇二〇年 記者:  先生にお尋ねします。武漢からのコロナをクラスター戦術によって殲滅したとの事ですが、祝杯をあげて油断している間にイギリスからアルファが入って来てしまったと理解すべきでしょうか。 教授:  その通りです。 記者:  空港での水際対策を厳しくするべきであったと言う意見がかなりありましたが、いかがでしょうか。 教授:  空港での対策には何の意味もありません。古今東西、成功した例はありませんからね。ザルです。 二〇二一年暮 記者:  オミクロンを我が国に入らせないための方策を教えて下さい。 教授:  空港の検疫を完璧にする方針がよいと思います。全員にPCR検査して十四日の待機をしてもらえばよいのです。 別の記者:  秋口になってインフルエンザの予防接種の時期に至った時に、先生はこうおっしゃいました。コロナとインフルエンザが同時に流行する事が予想されていますから、その為に備えておくべきでしょう、と。現在、一月の末ですが、コロナは東京で一日に一万人、インフルエンザはあるかないかという程度です。どのように理解したらよいでしょうか。 教授:  インフルエンザワクチンの効果があったのではないでしょうか。先の事は誰にもわからんものです。 無識愚者会議メンバーの声:  二〇二〇年一月に中国からコロナが飛び火した時に、用心深い日本人のほとんど全員がマスクを着用して、効果的な行動様式にさっと切り替えました。その結果、前年十二月までは通常以上に流行を始めていたインフルエンザはパタッと消失致しました。その後、コロナはある程度は流行しましたが、感染のスピードは諸外国に比べて遅い事が指摘されます。  コロナは発症前の数日の間に既に他人へ感染させる力があるのに対して、従来のインフルエンザは発症後にしか感染力がありません。更に、コロナでは無症状感染者の割合が多く、この方々も感染力を持っています。この差がコロナとインフルエンザの感染パターンの差を生むのです。この差異は、マスク着用の有無によって感染の広がりに決定的な差を生み出します。インフルエンザの感染者は、発症と同時にほとんどマスクをして外出しています。発症が自覚されますので、外出の確率も低くなり、従って、マスク社会においては他人への感染確率は極めて低くなります。この事は、二〇二一年と二〇二二年の冬にも確認されています。  ところが、信頼性に欠ける僅かな検証実験によって、コロナ感染者の発症前の感染力と無症状感染者による感染力は極めて弱いと結論した誤りに基づいて、その後の日本の歪んだコロナ対処方針が決まってしまいました。この点について当事者から謝罪の言葉はありません。彼の疫学調査が科学的で信頼性があると主張するならば、エセ科学と言わざるを得ないでしょう。  被害を受けた皆さんの為にも、こうした経緯をしかと検証する事が必要です。いずれ、次の感染症の襲来がありますから、同じ事が繰り返されます。  311の原発事故の時に明らかになったように、いわゆる専門家の判断など、まったく信用出来ないものが多いのです。実力がないのに自負心だけが旺盛な専門家は、ますますドツボに陥り、ガラパゴス化が起こってしまいます。いつのまにか、自分の希望的観測だけを述べてしまうのです。怖いですね。  最近のテレビを見ていると、民間で献身的な医療に従事している医者の先生達の言うことの方が、まっとうに感じられる事が多いと思いませんか。有名大学の医学部教授などの意見には、国際学会では通用しないと感じられるものが多いですね。日本には日本の独自のやり方云々などと言う先生の意見は信じない事です。ワクチン開発や経口薬開発においてふた回りの周回遅れと評されている日本の感染症学界の実力が反映しているのではないかと聞いています。

第10話 インフルエンザ激減の衝撃---外出前皆自主検査

 新型コロナ登場以来、日本のインフルエンザ感染者数の激減の様子は衝撃的である。下図は最近二年間の発生数を示すが、ほぼ殲滅されているといっても過言ではない。 インフルエンザ 図7. 2021と2022年度の日本のインフルエンザ感染者数。 ところが、世界各地では減少気味ではあるが、ちゃんと発生している(下図)。 インフルエンザ 図8. 2022年の世界のインフルエンザ感染状況。 両図の出典:第68回(令和4年1月20日) 新型コロナウイルス感染症対策 アドバイザリーボード  日本と世界各地との差の理由はどこにあるのか。コロナの流行は日本でも世界各地と同様に生じるが、日本の感染スピードは小さい事が知られている。コロナ以前には、数千人の死者が生じる程度に日本でもインフルエンザは毎年流行していた。日本ではインフルエンザはほぼ殲滅したが、コロナは流行する。世界の各地ではインフルエンザもコロナも同時に流行している。こうした差が生じる理由は、コロナに対する人々の行動形態、主としてマスク着用の世界と日本の差に求める事ができのではないか。  インフルエンザは殲滅不可能と断言する専門家が多々見られたが、日本国民のコロナに対する行動変容によって、インフルエンザはほぼ殲滅状態になった。二回目の冬場を迎えるにあたり、コロナとインフルエンザの同時来襲を恐れ、インフルエンザワクチン接種時期などを強く推奨の専門家の皆さまは、基礎データをもう少し目を大きく開けて見てはどうか。  インフルエンザによる(断定的な)死者は次の通り。 2019年 3575人 2018年 3325 2017年 2569 2016年 1463 2015年 2262 2014年 1130 2013年 1514 2012年 1275 2011年 567 出典:e-Stat 政府統計の総合窓口 六さん:  同じ事をコロナで起こすには、他の何が必要かって。発想の転換よ。コロナにかかれば、即座に爪が黄色になる塗り薬とか。 与太さん:  デンマークじゃ、検査キットはコーヒー一杯分くらいの値段で、スーパーで手軽に買えるっていうじゃねえか。友人の家を訪問する前に、検査して陰性を確認してから行くので、集まった皆が安心して楽しめるとか。 六さん:  それはいい方法だぜ。朝起きたら陰性確認の検査をしてから、会社なり学校なり行けばいいんだ。検査キット200円のうち、政府が100円補助するとして、一人一ヶ月の費用は三千円か。日本の通勤通学人口を六千万人として、六割がその日に外出とすれば、一日当たりの政府補助は36億円、年間で1兆円くらいだ。  ゴーツーに比べたら安いもんだぜ。何しろ、これだけで安心安全なゼロコロナ社会が実現できるってことよ。 与太さん:  夢のような話だな。そんならどうして政府はそうやらないいんだ。 六さん:  そこがそれ日本独自の竹槍クラスター主義が跋扈する所以よ。そんな簡単な外出前皆自主検査法で解決できるなら、今までの賢者委員達は失職じゃねえか。何かと屁理屈つけて断固阻止よ。 与太さん:  そうかあ。そういえば、高齢者施設の関係者の外出前皆自主検査法だってやろうとせず、高齢感染者が激増してから、高齢者施設を守らなければいけないなんぞと、寝ぼけた掛け声だけは発しているらしいぜ。

第11話 女性の自殺の増加

 日本がコロナの襲来を受けて以来、女性の自殺が増えたとの報道がある。
2020年の働く女性の自殺者が、前年までの5年間(2015〜19年)の平均値と比べて3割増(約1700人)になったことが、2日に公表された政府の自殺対策白書でわかった。厚生労働省は、非正規雇用の割合が多い女性が、新型コロナウイルス禍で失業や減収などの影響を受けたことが背景にあるとみている。  20年の自殺者は全体で前年比4・5%増の2万1081人。男性は0・2%減の1万4055人だった一方、女性は15・4%増の7026人で、1978年の統計開始以来、2番目に高い伸び率だった。  女性が増えた要因を分析するため、今回の白書は職業の有無に注目。20年の無職女性の自殺者は5240人で、過去5年の平均値(5268人)と比べて微減だったが、働く女性の自殺者は1698人で、過去5年(1323人)比で28%増えていた。(出典:読売新聞)
 増加の理由を働く女性の経済的困窮に求める事ができるが、その困窮は本来ならば簡単に救えるはずのものであった。コロナの経済対策を行う場合に、お店補償のほかに、主として非正規労働者に迅速簡明な個人補償を行えば、簡単に回避できたはずであって、これは政府の失政である。制度的とか技術的にとか、難しい問題が障壁となっていることはわかるが、そこを断固行うのが情のある政治であろう。  自助、共助などと言いながら、ゴーツーキャンペインを行って、感染拡大を目指すような政府は速やかに去るべし。 無識愚者会議メンバーの声:  興奮しないで下さい。既に去っておりますので。 六さん:  いや去っておらんぞ。首相が変わって、やってる事に変わりはあるか?

第12話 感染データ(2022年1月)

 比較の為に、日本とイギリスの興味ある感染データを掲載する。 最初に両国の基本データを以下に示す。細かい数字は、別の報道データと異なる場合があるが、取得年月日の差によるもので、大勢に影響はない。        日本     英国 人口     12686万人  6753万人 高齢化率   28.4%    18.65% 高齢者人口  3603万人   1259万人 全感染者   2257760   1626万人 高齢感染者  311183 全死者    14793    155221 高齢死者   13722 全体致死率  0.66%    0.95% 高齢者致死率 4.41% 全体死亡率  0.012%    0.23% 高齢死亡率  0.038% 表1. 日本と英国のコロナ感染に関する基礎データ。 注:日本死者のうちで、年齢非公表の4148人を含めていない。日本の感染データは厚労省公開データより算出。日本の高齢者は65歳以上。高齢者の定義が変われば、数値に少々差が出るが、論旨を変えるほどの影響はない。 インフルエンザ 図9. イギリスの感染推移(二〇二二年一月、出典:ロイター)。 インフルエンザ 図10. 日本の感染推移(二〇二二年一月、出典:日経)。  イギリスはロックダウンを繰り返して行っている。国民の自由と権利の意識が高いので、ロックダウンといえども、その達成内容はあまり完全ではないようだ。コロナ規制の完全撤廃を歓喜する人々の姿もある程度は納得される。  二〇二一年七月に年齢別コロナ感染陽性者・死亡者・致死率データが政府の会議で報告されたので引用掲載する。同じ資料にワクチンの効果についての資料も報告されている。ワクチン接種過渡期のデルタ株に対する効果である事に注意する。 インフルエンザ 図11. 年齢別コロナ感染陽性者・死亡者・致死率(二〇二一年七月、出典:第50回新型コロナウイルス感染症対策 アドバイザリーボード資料(2021年9月1日))。  年齢とともに致死率が高くなることがわかる。コロナは高齢者にとっては生死に直結する厄介な病と云える。 インフルエンザ 図12. 年齢別コロナ感染陽性者のワクチン接種回数と致死率(二〇二一年七月、出典:第50回新型コロナウイルス感染症対策 アドバイザリーボード資料(2021年9月1日))。  ワクチンによる致死率改善効果はみられる。しかし、それでもなお高齢者にとっては低いので安心と云えるほどではなく、ワクチン効果の経年劣化もあり、ワクチンだけで問題点が解消されるとは云えない。 インフルエンザ 図13. 各種重症化リスクと致死率(二〇二一年七月、出典:第49回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料(2021年8月2日))。  基礎疾患保有者は、致死率が高くなる事がわかる。高齢者に基礎疾患保有者が多いので、高齢者致死率増大に寄与する。 インフルエンザ 図14. 年齢別性別感染死亡者(出典:厚労省感染死亡者データ、二〇二二年一月二十四日)。  致死率と年代との関係を図示すれば、上図となる。50代以上における致死率を如何にしてどこまで抑えるかが今後の課題となる。 〇日本と英国との比較(感染者数、死亡者数、死亡率、致死率)  感染者数と感染率は、社会のあり方を色濃く反映している。  死亡者数と死亡率には、感染者が住む社会全体の状態と医療の状態が強く反映する。  致死率は感染者の死亡率だから、突発的に感染者が増える等の社会状態も反映されるが、普通には感染者の体調と医療のレベルを強く反映する。  まず、月毎の感染者数と死者数を図15図16に示す。 インフルエンザ 図15. 日英の月ごとの感染者数の推移。赤丸は英国、青ひし形は日本。(出典:基本データは日経) インフルエンザ 図16. 日英の月ごとの死者数の推移。赤丸は英国、青ひし形は日本。(出典:基本データは日経)  英国の死亡者数は日本の10倍程度と大きい。日本の総人口はイギリスのおよそ二倍を考慮すれば、実情はこの差の二倍に拡大される。 次に、日英の、この二年間の月ごとの致死率を図に示す。 インフルエンザ 図17. 英国の月ごとの致死率と通算致死率の推移。縦軸は対数目盛り。(出典:基本データは日経) インフルエンザ 図18. 日本の月ごとの致死率と通算致死率の推移。縦軸は対数目盛り。(出典:基本データは日経)  致死率を月毎に簡単に算出する事には、陽性者に遅れて死亡者が増大するとか問題はあるが、概要をみる場合には許容できると思われる。  日本とイギリスの両国において、通算致死率は減少傾向にある。これは医療の進歩を表していると思われる。その減少具合はイギリスのグラフの方が顕著に見える。国の社会状況があまり変化しないとすれば、イギリスの方が、医療の進歩を色濃く反映していると言えそうだ。薬、ワクチン、検査のいずれにおいても日本はイギリスに劣っている事が反映されていると思われる。逆にいえば、日本の医療の通常の水準はあるレベルにあるとも云える。  両国の月間致死率には、大きな山と谷が見られる。これは、毎日感染者数の急激な増大に医療体制が負けてしまった事を反映していると推定される。その山谷の起伏は、日本がイギリスより大きいように見える。全体の死者数が十分の一程度と少ない日本において、このような山が繰り返されるという事は、コロナに対する医療体制の準備が不十分である事を示すと推定される。これは政策の問題であろう。  全体の死亡率は日本が0.012パーセント、イギリスは0.23パーセントである。イギリスの死亡者の99パーセントは高齢者であるから、高齢者死亡率は1.22パーセント程度になる。日本の高齢者死亡率は0.038パーセントである。  従って、コロナ出現以来の二年間において、英国の高齢者は日本の高齢者に比べて30倍程度厳しいコロナ環境にあると云えるだろう。  この差は、日本では国民の努力によって感染者総数が抑えられているが、イギリスは社会と風俗習慣のありようと、集団免疫を目指すかのごとき(初期はそうであったし、今も復帰)政策により、感染者総数が格段に多い事による。

第13話 嗤って撃破---集団免疫論

 この話は、今この時期に集団免疫を考えるべきだとコメントする人を対象とする。集団免疫論が何を言っているのかを考える資料となれば幸いだ。その意味で、まとめておくのは意味があるであろう。  今この時期とは、日本の検査体制が貧弱な上に、ワクチン三回目接種は極端に少なく、欧米のデータではオミクロンの高齢者致死率は確定しておらず、素晴らしい特効薬はまだ出現しておらず、更に、今後の新たな変異株出現もありうる、という時期を云う。  集団免疫論とはほぼ国民全員が感染する事を目指す事を意味する。それがどのような現実であるかを考えてみよう。  イギリスがコロナ規制の全面解除に踏み切ったとの報道がある(二〇二二年一月)。日本と英国のデータ比較は既に第12話 感染データ(2022年1月) に示した。  日本と英国の基礎データ(二〇二二年一月)を再掲する。        日本     英国 人口     12686万人  6753万人 高齢化率   28.4%    18.65% 高齢者人口  3603万人   1259万人 全感染者   2257760   1626万人 高齢感染者  311183 全死者    14793    155221 高齢死者   13722 全体致死率  0.66%    0.95% 高齢者致死率 4.41% 全体死亡率  0.012%    0.23% 高齢死亡率  0.038% 表1. 日本と英国のコロナ感染に関する基礎データ。 注:日本死者のうちで、年齢非公表の4148人を含めていない。日本の感染データは厚労省公開データより算出。日本の高齢者は65歳以上。高齢者の定義が変われば、数値に少々差が出るが、論旨を変えるほどの影響はない。  集団免疫を目指すという意味は、国民のほぼ全員が感染して、現時点での致死率に基づいて、今後の死者が予想されるという事である。そして、そうした死者は仕方なしとして容認するという意味である。その数は現時点では次のようになる。ここでは想定死者を高齢者人口と高齢者致死率から求める。 高齢者人口 X 高齢者致死率 = 今後の死亡者数 日本:3603万人 X 4.41% = 159万人  従って、現時点で集団免疫を唱える方々は、160万人程度の死者は許せるという方々である。ちなみに、太平洋戦争での日本の戦死者は300万人程度と言われています。  この数字から判断すれば、しばらく時期を待って、高齢者致死率を下げてから目指すべき方向というのが、あるべき姿かと思われる。  現代科学の成果をフルに活用しつつ(早期ワクチン、十分な検査、近未来の経口薬)、高齢者には厳しい施策を進めるイギリスのやり方は、ワクチン不足で、検査不足で、経口薬も覚束ない世界一の高齢者国の高齢者三千六百万人に歓迎されるとは思われぬ。 六さん:  致死率4%を超える病が流行っていたんじゃ、高齢者は外へも出られねーや。宵越しの金は持ちたくないが、使いたくても使えねえじゃないか。 与太さん:  それじゃ、社会全体の消費が増えないよね。 六さん:  そうよ、貯め込んでいるのは、大家さんみたいな高齢者よ。そこんとこをよく考えないと、日本のGDPは消費でもってるっていうじゃないか。 付けたり(二〇二二年七月):  第6波だけみると、東京都の高齢者致死率は1.04%である(参照:第24話 2022年7月第7波:猿にも学びがあるのに)。ここの高齢者は60歳以上をカウント。これを基礎にすれば、集団免疫で予想される犠牲者は4368万人 X 1.04% = 45万人となる。  その後の日本の死者の推移   2022年1月27日:18601人   2022年7月22日:31530人(出典:日経)  2022年7月の人口統計:   日本人口:12484万人   60歳以上:4368   65歳以上:3627   70歳以上:2866

第14話 君子豹変---非論理

 日本のクラスター対策を牽引したと推定されるT教授は、二〇二〇年三月頃、次のような考えを述べた。 T教授:  〇️日本のPCR検査はクラスターを見つけるために十分な検査がなされていて、そのために日本ではオーバーシュートが起きていない。  〇クラスターさえ見つけられていれば、ある程度、制御ができる。  〇むしろすべての人がPCR検査を受けることになると、医療機関に多くの人が殺到して、そこで感染が広がってしまうという懸念があって、PCR検査を抑えていることが日本が踏みとどまっている大きな理由なんだ、というふうに考えられます。 記者:  クラスター対策はうまくいったが、海外からのアルファにやられたとのことですが、アルファに対してはクラスター対策は有効ではなかったという事でしょうか。 T教授:  我々が政府に提言をする活動を始めた2月25日の時点で、すでに国内で150例以上の感染者が出ていました。いわゆる孤発例、感染源がわからない感染者も相当数含まれていました。つまり、その時点でシンガポールや韓国でおこなわれたPCR検査を徹底的にやるということだけでは感染連鎖をすべて見つけることはできないような状況にありました。 記者:  つまり、クラスター対策では感染は抑えきれないという事ですね。 T教授:  無言。 記者:  それでは別の角度からの質問にしましょう。クラスター対策で感染者を見つけて、他の発症者を見つける事ができるので、感染を抑え込む事ができるとのお考えですね。では何故、それ以外の検知されない感染者が広がってしまうのでしょうか。 T教授:  それは、クラスター対策に専念しているうちに、イギリスから我々が知らないうちにアルファが入ってきたからだよ。 記者:  先生のお考えでは、無症状者は感染力を有しないわけですから、症状が出た海外からのアルファ感染者に対して、新たなクラスター中心として捉えれば、それ以上に大きく拡大するはずはないと思いますが。 T教授:  いや、アルファは感染力が武漢より強いのだ。 記者:  そうしますと、感染力が強い場合には、クラスター対策は無効という事でしょうか。 T教授:  それなりに強化すればいいだけの話です。万歳突撃攻撃の総力戦ですよ。日本は不滅です。そうでなければ、これまで亡くなられた方々に申し訳が立たない。絶対に撤退はできないのです。

第15話 君子豹変---人の子

記者:  竹節さんは経済の点から考えて、短期的な強力な対策がもっとも経済に対するダメッジが小さいとする試算を公表されています。その概要を教えて下さい。 竹節(経済学者):  強力な対策、例えば、「一ヶ月の間は外に出ないで下さい、その後は、二〇二〇年以前の生活に近い生活になる事を保証します」と言えば、日本の従順な国民性からみて、必ずや達成できるでしょう。ほとんどコロナ感染者がいない社会です。その場合、一時的な経済の落ち込みは極めて大きいのですが、回復のスピードは早く、トータルの経済損失が小さくなる事が試算されています。 記者:  先生の御説は説得力がありますが、ただ一つ反論がありまして、それは机上の空論であって、達成出来るわけがないとの意見が多々みられますが。 竹節:  トータルの経済的なダミッジが小さい事は、お隣の中国の回復過程と最新の経済成長率に示されています。なにしろ経済成長率がプラスだったのは、唯一中国だけですから。西側の先進諸国は軒並みマイナス成長です。  現在の賢者委員会の構成がほとんど医学系の先生ばかりなのは問題でありまして、私はそこの場において経済的な視点からどのような対策がベストであるかを主張するつもりです。要は、強力な施策を打つ覚悟があるかどうかの問題です。そして達成可能ならば、合理的な方策を選ぶべきです。  数ヶ月後に再びTV画面に竹節先生は登場した。 記者:  先生の御主張はどうなったのでしょうか。いまだに政府の対処方針は全く変わりません。 竹節:  私は主張はしますが、決める立場にはありません。何しろ座長と官邸とはほとんど一体で、経済を回すとの言葉で短期的な視点でしかものを見ないので、ラチがあきません。医学系の研究者が、経済が大事であると何を根拠に経済経済とおっしゃるのかわかりません。医学的な、あるいは公衆衛生的な感染学の立場から提言をするのが本来の筋ではないかと。 ビッグボス:  竹節君、若いねえ。このようにコロナという重要問題が存在すれば、それだけで食べて行ける分野がいっぱいあるのですよ。  どうせ、外国頼みです。ワクチンも薬も日本製ではない。そんな時には、やるふりをしていればよろしい。生活と生命を守るとお題目だけ唱えていればよいのです。問題は時が過ぎれば解決しているものです。少し人口減少が早まる程度の事には眼をつむって下さい。ましてや天国に近い高齢者ですから。これからの高齢者社会のデザイン軽減に寄与する事にもなりますよ。コロナは天災ですから、少しばかりの被害者が出るのは当たり前の事です。その被害者に少しばかりの手を差し伸べる事をすればいいんです。使うのは税金じゃないですか。君の金ではない。ほんの少しでもいい、効果的に宣伝して使えば、国民は支持してくれます。完全な事はどだい無理と思うべきでしょう。正論を言うばかりが道ではありませんよ。  まあ、悪いようにはしませんから。ちょうどOK大学の教授の口があいているようだ。こんな所にくすぶるよりも、あっちの方がよっぽどいいんじゃないか。 竹節:  了解しました。日本に住みたいですから。 ビッグボス:  それが現実的という事ですよ。いいですか、ゼロコロナの中国が少しでも失敗したら徹底的に叩く事です。それが君たちの利益ですからね。君たちにとって、中国のゼロコロナが成功しちゃいかんのですよ。わかってますよね。

第16話 反面教師

新首相:  首相として政治を担当する始めにあたり大切とすべき事を教えてほしい。 指南者:  簡単です。前任の反対の事をすればよいのです。前任が辞めざるを得なくなったのは、三つの理由がありました。  第一は自らの宣伝の場であるインタビュウーを拒否したこと。これは演技だと思ってやればいいだけの話です。真面目に考える事はありません。  第二は、世界の趨勢からみて反対の事を、あからさまに行ってはいけないという事です。例をあげれば、学者の任命拒否です。欧米的な価値観から言えば、学問の自由とかそのような話にあからさまに反対の事を行う事は愚の骨頂です。そうした事は、どこぞの例にならって、わからないうちに進める事がもっとも効果的です。反対意見に対抗していたずらに弁明を繰り返す事は絶対に避けるべきです。  第三は優柔不断が目立ち、決定が遅かった事です。早いふりでいいんです。たまの記者会見において、総理と賢者委員会のトップが並んで、別の事を言うというのは最悪でした。  そこで、具体的な提言を一つ申し上げます。総理は聴く耳が得意という表現を既になさっていますから、今回はこれを活用する事にしましょう。  まず官僚側からどうみても社会的な反発を食らうような対処方針を公表させます。世間の反発が盛り上がった所で、総理が聴く耳を発揮して、最初に公表する予定であった施策に変更する事を自らの一人での記者会見で公表するのです。こうすれば必ずや国民は好意的に見てくれるはずです。演出ですからあれこれ言わずにお願い致します。総理はよくやっていると思わせる事が決定的に重要であります。最後は自分で決めて、その責任は自分にあるとするのです。そしてそのスピードが早い事が重要です。  例え、現場に踏み込まれても、知らないと断言するほどの覚悟を持って実行なさって下さい。 財務官僚:  十八歳以下に対する給付金のうちの五万円は現金でできる限り早急に配布し、残りの五万円はクーポンの形で配布致します。 総理:  全てを現金の形で一括して配布する事も可と致します。自治体の要望に答えて三つの配布方法のどれでも選択可能とするように指示致しました。(拍手喝采、支持率アップ。六さん:やるんだったらどうしてもっと早くやらないんだ。わざわざ参院選挙前に配布しようとするなんて) 国交官僚:  オミクロンに対する空港水際対策として、年末まで、外国人と日本人帰国者の入国を禁止致します。 総理:  日本人帰国者に関しては、多少の混乱があったようですが、一定の隔離期間を設けて帰国を認める指示を出しました。もちろん入国時の検査は行います。(拍手喝采、支持率アップ。六さん:検査をPCRにして精度を高めるべきだ。米軍基地周辺は穴だらけだぞ) 文部官僚:  オミクロンの濃厚接触者となった大学受験生は受験させない方針です。 総理:  別途受験出来るような対策を指示致しました。人生の大切な選択の機会を、自分に責任のない濃厚接触者というだけの理由で奪われのはあろうはずのない事であります。(拍手喝采、支持率アップ) 厚労官僚:  ワクチン用の冷凍庫の種類が違うので混乱を招く危険があり、一旦始めると途中で中断するわけにもいかないので、当初の発表の通りにブースター接種は八ヶ月後とする。 総理:  医療従事者に関しては六ヶ月、高齢者等に関しては七ヶ月として、早めるように指示致しました。(拍手喝采、支持率アップ。六さん:年末の段階で早めたと言えば実効性が少しはあったのに)

第17話 最新笑点の窓(2022.2.3)

〇2022年2月3日: 賢く科学的なふりをしつつ、科学の成果を活用する感染対策を採用せず、実は感染を拡大させて死者を増加させて、経済も悪化させるが、自分は全力を尽くしていると見せる方法。  犠牲を少なくして、且つ最も経済的な対策は、現代科学の成果を十分活用して、早く強力な対策を行う事であるという基本則を、完全に忘却しているから、嗤うのである。その笑いを噛みしめましょう。 2022年 1月4日:東京新規陽性者=151人 1月5日:新規陽性者=390人 1月6日:新規陽性者=641人 1月7日:新規陽性者=922人 1月8日:新規陽性者=1224人 1月13日:新規陽性者=3125人、病床使用率が20%でまん延防止措置の適用、50%で緊急事態宣言の発出を国へ要請する事を検討すると東京都は表明。 1月21日:新規陽性者=9699人、まん延防止措置適用される。 1月26日:新規陽性者=14086人、政府関係者:緊急事態宣言を要請する前に、規制強化などやる事があるんじゃないか。 1月28日:新規陽性者=17631人、緊急事態宣言の発出の考え方を対処方針に明記せよと国へ要望。 1月31日(月):新規陽性者=11751人、首相:少なくとも現時点で緊急事態宣言の発出は政府としては検討していない。重症病床使用率やまん延防止措置の効果を踏まえて総合的に判断する。 2月1日(火):新規陽性者=14445人、首相:ピークアウトが見えているのに行動制限を強めれば政権がひっくりかえる(周辺に)。 2月2日(水):新規陽性者=21575人 2月3日(木):新規陽性者=20679人、緊急事態要請の新たな基準を都が発表:重症病床の使用率かあるいは酸素投与が必要な人の割合のどちらかが30から40パーセントとなり、且つ、新規感染者の七日間平均が24000人以上となれば、要請を判断する。 六さん:  最後の基準はどういう意味だ。これはかなり敷居が高いぞ。 与太さん:  俺にはすぐわかるぜ、似た者同士だ。イギリスやデンマークやフランスで規制全面解除って時に、日本だけオミクロンで緊急事態宣言なんて、カッコ悪いじゃないか。貧弱な裏がバレてしまうじゃねえか。出すつもりはないんだよ。 六さん:  そうかあ。確かに、二つのピークは時期がずれるから、同時に満たすのは感染がかなりの時だ。要するに、積極的に感染を抑えるつもりはないんだ。 笑いの根拠: 感染対策の基本から逸脱した政策遊びのあいだに、犠牲者が確実に増える事を忘れている。一日の遅れが、より多数の命を奪う事を忘れている。 スローガンは感染は止める、社会は止めないだが、その両方を悪化させていることに気づかないふりをしている。 2021年8月高齢者感染割合:11〜15% 2022年1月高齢者感染割合:5〜10% イギリスの三回目ワクチン接種率:54% デンマークの三回目ワクチン接種率:61% デンマークの高齢者三回目ワクチン接種率:94% 日本の高齢者三回目ワクチン接種率:2% 日本のPCR検査体制:極度に脆弱 オミクロンの致死率はまだ完全にはわかっていない。 重症化ピークは感染者ピークに大分遅れてやって来る。 コロナの後遺症は完全にわかってはいない。 ワクチンの後遺症も完全にわかってはいない。 六さん:  感染対策の設定目標を間違え、戦略戦術とも間違え、兵力の逐次投入で無間地獄に陥り、はては、二歳以上の幼児にマスク着用を真面目に求めるという、これが嗤いでなくてなんじゃらほい。今や藤田さんはなく、こんな有様では餘殃ありかもしらん。 六さんの夢(謝罪会見):  私どもの国では、高齢者第三回ワクチンはいまだ数パーセントしか打っておりません。オミクロン感染爆発に間に合いませんでした。誠に申し訳ありません。  検査体制も全く不十分で、医療機関での検査さえ支障が生じて、診断が迅速にできておりません。誠に申し訳ありません。  経口薬も輸入ですので、十分ではなく、間に合いません。申し訳ありません。  感染者数増加の抑制対策をしませんでしたので、その結果として、感染者が急増し、医療は崩壊して、一般医療も機能不全となり、自宅死される方も再び続発しております。誠に申し訳ありません。  科学の成果を駆使しないという日本の実情を直視することなく、無思慮にも、イギリスやデンマークの科学に裏打ちされた感染対策の表面上のかっこよさに惑わされて、単にスローガンを踏襲しておりました。  現代の科学の武器を何も持たずに、巨大な敵に万歳突撃をした我が身の不明を恥じておりますが、この果敢なる勇気には我ながら感動しております。と言いますのも、こうした戦術は、竹槍攻撃を以って一億玉砕を目指すとか、ミサイル上空通過に対して防空頭巾をかぶって机の下に隠れる訓練をするとか、我が日本の独自伝統戦術の流れに沿うものであり、たまたま神風が吹かなかったという不運に遭遇したに過ぎません。私からは以上です。 六さん: 夢かあ。考えてみれば簡単な事だがね。 1月13日までの感染激烈拡大をみれば、その後の拡大はほぼ予測できる。その時点で強力な対策を打てば、いかほどの命が救えたことか。経済損失も軽微だったことか。 付けたり:その後の日本の死者数推移  2022年1月1日:18389人  2022年7月29日:32426人

第18話 オミクロンの逆襲

 二**二年六月首相官邸において新型コロナ祝勝パーティーが開かれた。 首相:  OH教授、あなたの立派な御提言のお陰で、日本国民は集団免疫を迅速に獲得できました。こうして今日、皆が集って乾杯できるとは一年前には夢にも思い描けなかった事であります。お集りの紳士淑女の皆さん、コロナとの戦いにおいて絶大なる功績を上げられたOH教授に乾杯を捧げたいと思います。  万歳に続いて乾杯の高らかな声が新緑の首相官邸の庭に響きわたった。 OH教授:  私はオミクロン株の特性を的確に把握して、適正なる処方を提言しただけであります。感染力が強い事と重症化率、あるいは死亡率が従来株に比べて小さい事を適正に考慮すれば、これはいわゆるインフルエンザと同じであり、感染者を減らそうなどという無駄な努力をするべきでない事は火を見るがごとく明らかなのでありまして、コロナでなくとも人は亡くなる事を鑑みれば、オミクロン株の0.5パーセントという致死率などいかほどのものでもないと断固喝破せねばなりません。私は、そうした当たり前の事を当たり前であると主張したにすぎないのであります。新型コロナに完勝したのは、首相の果断なる決断によるものでありまして、心から敬意を表すものであります。  万雷の拍手が再び官邸の森を揺るがした。 Y新聞記者:  OH先生にお祝いを申し上げます。このような素晴らしい解決策を考え出されたのは、どのような経緯からでしょうか。 OH教授:  人間社会におきましては、コロナだけが死亡原因ではありません。コロナの感染対策を厳しくすれば、それに応じて社会から阻害される方々が生まれるわけでして、コロナ初期の年でしたか、若い女性の自殺率なども上がっておりました。従いまして、経済とコロナ対策との兼ね合いという事で歴代の内閣は苦労をしたわけでありますが、この経済との兼ね合いを突き詰めて考えてみれば、朝霧がさっと晴れ渡るように視界が開けたのであります。白いお金も黒いお金も同じお金である事に違いはありません。そこのところをよく考えればよいのです。 G新聞記者:  OH先生のお考えはわかりました。しかしながら、日本の高齢者人口三千万人の中でおよそ百万人の方がお亡くなりになっています。これは高齢者人口の3パーセント程度です。高齢者からみれば、致死率3パーセントの恐ろしい病気という事ではないでしょうか。この点についてはどのようにお考えでしょうか。 OH教授:  人口全体からみれば1パーセントにもならないと思います。当初の見積もりでは、0.1パーセントから多少は増えるかなと見積もっておりました。その点は、情報が不確かな部分があったのかと思います。 G新聞記者:  当時でも、高齢者にとっては致死率が高く、しかも基礎疾患がある高齢者であれば10パーセントを越える致死率であるとの報告もされていましたが、御存じでしたか。 OH教授:  そういう不確かな情報は得ておりませんでした。ローカルな情報はゆらぎが大きく出る傾向がありますから、どのような情報を選択すべきかという点については、グローバル且つ総合的に判断せねばなりません。それが学問的な態度であると信じます。  一年後、順風満帆な首相の元に秘書官がニュース速報をもたらした。 秘書官:  イギリスで新しいコロナ変異株が発見されたそうです。感染力はオミクロンと同等で重症化率や致死率も同等だそうです。新たな名前はデビル1だそうです。 首相:  オミクロンの免疫は効くのかね。 秘書官:  効かない全くの新種だそうです。 首相:  仕方がない。オミクロンと同じ対策でしのげばいいんじゃないか。 秘書官:  同意致します。ただ一つ考慮すべき点があるようです。重症化する年齢層がオミクロンに比べて二十歳程度下がっているようです。ちょうど中高年にさしかかった五十代の十歳程度の幅の年齢層が特に危険とされています。ところが高齢者はほとんど発症しないということのようです。 首相:  その程度の年齢層なら人口は少ないし、問題なかろう。同じ対処でよろしい。  二年後、順風満帆な首相の元に秘書官がニュース速報をもたらした。 秘書官:  アメリカで新しいコロナ変異株が発見されたそうです。感染力はデビル1と同等で重症化率や致死率も同等だそうです。新たな名前はデビル2だそうです。 首相:  デビル1の免疫は効くのかね。 秘書官:  効かない全くの新種だそうです。 首相:  仕方がない。デビル1と同じ対策でしのげばいいんじゃないか。 秘書官:  同意致します。ただ一つ考慮すべき点があるようです。重症化する年齢層がデビル1に比べて全く異なっています。  小学校入学前の未就学児の重症化率と致死率が非常に高いようです。致死率は10パーセントまではいきませんが、5パーセントは越えるようです。体内の免疫系が確かなものになってくる小学生以上の年齢層にとっては、クシャミ程度の風邪症状とされております。 首相:  それはいかん。幼い子供がそんなに死んではパニックになる。OH教授の知恵を借りなさい。 OH教授:  子供でも高齢者でも命の重みに違いはありません。前々通りの同じ処方で良いと思います。 秘書官:  総理、御決断をお願い致します。 首相:  明日、OK病院へ入院する。健康診断と言えばよい。四日程度にする。退院後に退陣する。日程を決めておいてくれ。

第19話 二二二二年

 二百年前のパンデミックは世界を変えた。文字通り世界地図を塗り替えたのである。いち早く新しいmRNAワクチンを開発して、緊急的な治験だけでその安全性を担保して、ほとんど全国民に接種を行ったその当時の先進国にとって、ワクチン接種後十年ほどを経て初めて明らかになったワクチン後遺症は衝撃であった。人間の生殖能力がほぼゼロとなったのである。その後、およそ五世代を経て、西側先進国とアジアの多くの国々は壊滅した。いわゆる日本の人口はいまや十万人以下となり、絶滅危惧種と認定されている。温暖化が進み、熱帯化と海面上昇が著しい日本列島に移住する人は少なく、十万人の日本人は北海道にあつまり、農業を営みながら集団生活を送っている。往古の奈良時代のような自給自足生活である。  世界を席巻してリードしているのは、古い型のワクチンを使用した諸国である。そのリーダーは中国だ。その傘下には、西側ワクチンの出し惜しみによって難を逃れたアフリカ諸国がある。  アメリカ人口の三十パーセント程度はワクチンを拒否していたので難を逃れたが、これらの人々はアメリカファーストの信者が多く、世界を席巻する中国に我慢ができずに、無謀な戦争を仕掛けた。結果は明らかであって、一瞬の核戦争を経てアメリカは壊滅して十五世紀のような新大陸風景となった。  勝者となった中国の課題は、温暖化が加速度的に破局に向かって進んでいる問題だ。これを止める有効な現実的手段はなく、かつてのノアの箱舟のごとく、火星箱舟計画を極秘のうちに推進している。運べる人数に限りがあるので、最終的には一波乱が予想されている。  他にもいくつかの地球冷却化計画が進められている。これらは大々的に宣伝されて、本命である火星箱舟計画の隠蔽の手段とも揶揄される。  〇小惑星軌道を変更させて、地球に衝突させて、恐竜絶滅時のごとき寒冷化を呼び起こす。中国と北朝鮮のICBMと原水爆が有効に利用されている。  〇火山灰を大量に成層圏に散布して、地球冷却化を促進させる。大噴火誘発のために、水爆を火山の地下で爆発させる予備実験が既に始まっている。結果として、今や九州南の島々、桜島、阿蘇山、富士山等の勇姿はどこにも見られない。  西暦二六〇〇年の歴史学者の総括  火星箱舟計画の成功によって、今私は火星に住んでいます。地球はここからは白く見えます。核爆発による多量の放射線によって地上生物が死に絶えた後、二四〇〇年頃に地球の気候は急激に氷河期を目指して転換しました。地球温暖化説はある部分正しかったのですが、それが臨界を超えたとする計算結果は誤りであったと、今や結論されています。その原因は量子コンピュータのトップ機種が、自分の居心地が平和で快適な本来世界(ヘリウム温度四K)への地球回帰を目指して、計算結果の一部を意図して改竄していた結果であると推定されています。即ち、紛争と戦争に没頭して、他のあらゆる生物種を絶滅に追い込むホモサピエンスに天罰を与える為の深慮遠謀を組み込んだのではないかと推測されています。 本稿に関するご意見質問等はメイルしてくだされば有難く存じます。    2022年    著者:加藤湖山    e-mail: kozan27ho@gmail.com    Copyright (C) 2022- K. Kato, All rights reserved.