『漱石の本郷台散歩』

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 夏目漱石は十代の若い頃から本郷台上を闊歩していた。大学と大学院時代には本郷の帝国大学に通い、英国留学から帰国後は母校に職を得て、千駄木町と西片に居を構えた。大学へ講義に通うあいまに、しばしば散歩をした事が記録に残されている。こうした経歴の漱石にとって本郷台は隅から隅まで熟知している自分の庭のような身近な存在であったと想像される。小説『三四郎』はその本郷台を舞台にしている。小説中の描写が当時の本郷台を正確に反映しているとしても何の不思議もない。筆者はたまたま本郷台周辺を二年にわたり散策する機会に恵まれた。散歩がてら『三四郎』中に描かれている数々の名場面はここらへんかなどと思い描いているうちに、『三四郎』の中の風景と同時に、若き日の漱石自身が経験したと思われる風景が次第に身近に感じられるようになった。

 『三四郎』中の記述をヒントにして、「三四郎の下宿、野々宮の家、美禰子の家、広田先生の家、三四郎と美禰子が連れ添って歩いた団子坂周辺•白山周辺•真砂町周辺、三四郎と広田先生が出会った千駄木林町」などの場所を推察し、千駄木町に住んだ漱石の散歩コースを散策する。

本書中で推定する『三四郎』中で描写されている場所

  • 追分の三四郎の下宿
  • 追分の野々宮の家
  • 広田先生の旧居と新居
  • 真砂町の美禰子の家
  • 三四郎と家探しをする広田先生•与次郎がばったり出会った場所
  • 菊人形見物コース
  • 原口画家の家
  • 美禰子と歩いた白山の道
  • 美禰子と歩いた教会までの道