『J-PARC陽子リニアックへの道』:Apple Books Storeにて電子出版:2023年9月
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2023年9月 version 1.0 公開
2006年11月からJ-PARC陽子リニアックのビーム加速テストが始った。振り返るとここまで四半世紀以上にわたる長い道のりである。今後、リニアックがデザイン通りの性能を達成出来るかどうかを注意深く見守りたいと思っている。というのも、このリニアック全般に対して、ほとんどの基本パラメータと加速管パラメータを決め、初期発注機器の仕様書案を書き、実際の製造方法まで細かに関与した故に、相当の責任があると同時に、結果に興味も覚える。加えて、当初のデザインからのdegradeも色々行われているので、その効果にも興味がある。
本書では、陽子リニアックの開発研究経過について、筆者の研究歴と重ねて、簡単に記述する。更に、J-PARCの陽子リニアックデザインが決定され、最初の加速管の入札に至るまでの2年間の記録日誌を掲載する。この時期が一番様々な「事件」が起ったまさに疾風怒濤の時期だからである。加筆していないので、関係する皆様に対する非礼な表現が多々見られるが、日誌という性格に免じて許していただきたい。その一瞬には、激越な感想を抱いたとしても、夫々の方々は、それなりに立派な仕事をされている事は周知である。
目次
まえがき
第1章 前史・KEK風景
第2章 KEKの40-MeV延長陽子リニアックのデザインと建設(1985年)
2·1 20-MeV陽子リニアック(1973年)
2·1·1 開発された技術
2·1·2 20-MeVリニアックの測定と検討(1980年〜)
2·2 40-MeV延長リニアックのコールドモデルタンク(1983年)
2·3 40-MeVリニアックの製作
2·3·1 円筒タンク
2·3·2 四極磁石
2·3·3 DTLデザイン
2·3·4 DTLのチューニング結果
2·3·5 40-MeVへの延長工事(1985年)
第3章 遠島からの奇跡的な帰還(1987年)
3·1 40-MeVリニアック建設後の遠島
3·2 たった一人の乱(1986年)
3·3 恐い話
3·4 新たな出発(1987年)
3·5 恩師
第4章 大型ハドロン計画(JHP1-GeVリニアック)
4·1 大型ハドロン計画デザインレポート(1988年)
4·2 RFQ出力エネルギー
4·3 ドリフトチューブ製作と永久四極磁石による収束法
4·4 DTL加速空洞(432MHz)
4·5 開発の進展状況(1992年度)
第5章 オリジナリティの3件
5·1 チョッパー(RFD)
5·1·1 ブースターシンクロトロンへのビーム入射
5·1·2 チョッパーの動作
5·1·3 チョッパー空洞
5·1·4 チョッパー用高周波電源
5·1·5 チョッパーのチューニングとビームスタディ結果(2002年)
5·2 分離型ドリフトチューブリニアック(SDTL)
5·3 シミュレーションコード:LINSAC
5·4 等分配理論の採用
第6章 仕様とデザインの大変更
6·1 再三の仕様変更:リニアックエネルギー
6·2 リニアックデザイン:ピーク電流
6·3 リニアックデザイン:可変収束系
6·4 リニアックデザイン:周波数(324MHz)
6·5 リニアックデザイン:敷地の制約
第7章 400MeV陽子リニアック:新しい仕様と開発
7·1 400MeV陽子リニアック:新しい仕様
7·2 PR銅電鋳法の開発:加速空洞
7·3 四極電磁石の開発
第8章 1997年研究日誌:JHF建設発注前夜
8·1 1997年の全体状況
8·2 予兆:新施設長との面談(5月16日)
8·3 ロシアからの研究者とSDTLメッキに関する波瀾(6月)
8·4 西川先生が一般公開に来訪(9月16日)
8·5 9月
8·6 国際advisory committee(10月14日)
第9章 1998年研究日誌
9·1 SDTL開発方法に関する激論
9·1·1 MEBT(432MHz)にビーム通る(1月27日)
9·1·2 諌言案(4月2日)
9·1·3 施設長面談(4月6日)
9·1·4 西川先生への手紙
9·1·5 激論(4月7日)
9·1·6 呼び出し・予算承認(4月24日)
9·1·7 SDTLのINR建設案の断念表明(5月12日)
9·2 DTL&SDTL発注までの経過
9·2·1 DTL-50MeV+SDTLの2-tank素案(5月13日)
9·2·2 S社との電磁石打合せ(5月29日)
9·2·3 資料招請の文案
9·2·4 経費の使途の提案あり
9·2·5 INR製SDTLの驚くべき測定結果(6月16日)
9·2·6 モデルRFD納入(6月18日)
9·2·7 NECにチョッパー電源を依頼する(7月6日)
9·2·8 NECよりチョッパー電源受注するとの返事あり(7月16日)
9·2·9 基本的要求要件(案)の詳細(高周波加速空洞一式)
9·2·10 7月後半
9·2·11 空洞導入説明会とNECとの第一回打合せ(7月28日)
9·2·12 8月
9·2·13 M社との話し合い(8月6日)
9·2·14 残暑見舞い(8月16日)
9·2·15 S社の四極電磁石の評価(9月)
9·2·16 S社へ意見を伝える(9月30日)
9·2·17 モニターとチューニングについて(10月11日)
9·2·18 機構長懇談会:東海に作る(10月14日)
9·2·19 S社の質問書に対する回答(10月20日)
9·2·20 M社の回答に対する回答(10月30日)
9·2·21 Advisory committee(12月7日)
第10章 大強度陽子リニアックの製作開始:記録写真
第11章 コンピュータを使った仕事
11·1 計算方法の履歴
11·2 コンピュータを使った仕事の内容
11·3 コードの改良と真剣勝負の他流試合
第12章 略年譜
第13章 終章
第14章 J-PARCリニアック基本寸法
14·1 DTL基本寸法
14·2 SDTL基本寸法
第15章 回想
15·1 L3BTデザイン変更の経緯(2002年)
15·2 出力50-MeVのDTLがKEKでは20-MeVまでしか完工出来なかった理由とその影響
15·3 J-PARC建設途上で生じた問題
15·3·1 J-PARC加速器出力特別委員会(2004年)
15·3·2 報告書内のリニアック部分の問題点についてのコメント
15·3·3 J-PARC加速器問題検討会(2006年)
15·3·4 リング関連部門の技術不足と不良品問題(2006年)
15·4 2009年末のJ-PARCリニアック運転の現状について
15·5 薤露に溺れた二匹の蟻の戯言
15·6 その後の経過
第16章 附けたり:J-PARCリニアック初期ビームスタディに対するコメント抜粋
16·1 2006年11月~12月の陽子リニアックビームスタディについて
16·1·1 全体:2006年12月まで
16·1·2 RFQのタンクレベルと出射エネルギーの相関 061130
16·1·3 MEBT:チョッパー
16·1·4 MEBT:DTL入射
16·2 2007年4月の陽子リニアックビームスタディについて:ランー6
16·2·1 全体へのコメント
16·2·2 加速電場について
16·3 2007年5月の陽子リニアックビームスタディについて:ランー7
16·3·1 前段階:配信メイルの抜粋
16·3·2 スタディ開始:25mA、横チューニング、チューニングミスの発見:配信メイルの抜粋
16·3·3 Run7へのコメント:ビームについて
16·3·4 Run7へのコメント:RFQ加速性能の検討を期待する
16·3·5 Run7へのコメント:ビームセンターについて
16·3·6 Run7へのコメント:ビームプロファイルについて
16·3·7 Run7へのコメント:MEBTでのミスマッチの修正
16·3·8 Run7へのコメント:加速電流と微弱電流モニターについて
16·3·9 Run7へのコメント:横エミッタンス測定は横チューニングの基礎と思うが?
16·3·10 Run7へのコメント:スタディ結果等の公表について
16·4 2007年6月の陽子リニアックビームスタディについて:ラン-8
16·4·1 RFQのRF振幅と入射エネルギーを決定した?
16·4·2 観測事実の一端:ビームの横揺れー時定数1時間?
16·4·3 天佑を活かす
16·4·4 リニアックの最適動作点はいつ探すのか
16·4·5 RUN7と8を眺めてのコメント
16·5 半年間のリニアックスタディを眺めて
あとがき
- 本書に関するご意見質問等はメイルしてくだされば有難く存じます。
著者:加藤湖山
e-mail: kozan27ho@gmail.com
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