『遠戚さがし』

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寛文十三年(1693)の八月十六日に、十歳前後の我が幼い遠祖は信州諏訪高島藩主諏訪忠晴に江戸藩邸で初めて出仕の拝謁をした。携えてきたと思われる家譜は、その後の歩みを書き加えられて明治まで残る。家譜を起点にして遠戚さがしを始めると、面白くも興味ある関係が続々と広がり、ついには元禄赤穂事件(忠臣蔵)の三人の主役とも繋がっているようだとの思いもよらぬ事実が見出された。あれこれ探索を重ねているうちに、家譜の出自部分の記述には作為の雰囲気が微妙に漂い、しかも、素性がはっきりしない幼い新参者に高禄を与え、藩主の縁者を娶らせた裏には何かが隠されているに違いないという疑問が生じた。その視点から改めて精査すると、遠祖が意図的に残したと思われるキーワードが浮かび上がる。それらは遠祖の真の出自を示唆すると同時に、隠蔽された出自という運命を皮肉な視線で眺めながら生涯を過ごしたと推測される遠祖の姿を彷彿とさせる。本書はこうした探索過程をまとめた記録である。探索過程でまとめた六十余の系図も付加した。中には一般的な観点から興味ある図も若干見出される。